安倍首相の友人が理事長を務める、学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、「首相の意向」などと記された文書が出回っている問題で、前川喜平前文科事務次官が会見を開き、文科省で作成された文書に間違いないと述べたことで波紋が広がっている。

 野党は連日、国会でこの問題を追及し、メディアは新しい「事実」を次々に明るみに出し、様々な論点が入り乱れて混乱した状況にある。だが本稿は、巷の情報錯綜から少し距離を置いて、日本政治の長年の課題である「首相の権力vs官僚支配」に論点を絞って、この問題の本質に迫ってみたい。

「安倍一強」は官邸に権力を
集中させた行政改革が成功した結果だ

加計学園問題は「野党の怠慢」と「政権の軽率」こそが問題だ写真:日刊スポーツ/アフロ

 この問題については、「首相の権力強化」と「首相の友人に便宜を図った」の2つを分けて考えるべきである。「首相の権力強化」は、いわゆる「安倍一強」と問題視されるが、それ自体は本質的には問題ではないからだ。

「首相の権力強化」は、90年代以降に取り組まれてきた政治・行政改革の成果なのだ。逆に言えば、「首相の指導力欠如」は日本政治の「永遠の課題」といっても過言ではないものである。特に、日本が高度経済成長を成し遂げた後、国際社会から先進国としての責任を求められるようになった時から、首相の指導力欠如は、国内外で深刻な問題となってきた。

 例えば、80年代から90年代にかけての、日米貿易不均衡の是正を目的とした「日米貿易交渉」である。日本の「市場の閉鎖性」を厳しく批判し、「経済構造の改造と市場の開放」を強く迫ってきた米国に対して、日本側は様々な省庁の間の「縦割り」を超えた、包括的な対応が必要となった。