時間外・休日労働の上限が定められて罰則も課されるなど、働く側を守る観点からの働き方改革が進められている。しかし、空前の人手不足が続く中、マンパワーの拡大を図れない中小企業は、在籍する社員たちの士気を高め、生産性の向上を図ることが急務となっている。あしたのチームの高橋恭介・代表取締役社長は、そのためにも人事評価の在り方を、これまでとは一変させる必要があるという。

人的倒産や自主廃業に追い込まれる中小企業が急増中

 中小企業は日本企業全体の99.7%を占めており、日本経済を縁の下で支えていることは間違いない。だが、その一方で多くの中小企業は存続の危機に直面していると表現しても、けっして過言ではないだろう。あしたのチームの高橋恭介代表取締役社長は次のように指摘する。

「経営破綻する企業の総数自体は減少傾向を示しているものの、人的倒産や自主廃業を余儀なくされるケースは逆に増えています。なぜなら、人材管理や採用が非常に難しくなっているからです。6月には有効求人倍率が1.51倍にまで達し、人材採用が極めて困難になっています。裏返せば、それは優秀な人材が辞めていくことも意味しており、企業間で奪い合いが激化しています」

株式会社あしたのチーム  高橋恭介(たかはしきょうすけ)代表取締役社長
大学卒業後、興銀リース株式会社に入社。2年間、リース営業と財務を経験。2002年、ベンチャー企業であったプリモ・ジャパン株式会社に入社。副社長として人事業務に携わり、当時数十名だった同社を500人規模にまでに成長させ、ブライダルジュエリー業界シェア1位にまで成長させた。2008年には、同社での経験を生かし、リーマンショックの直後に株式会社あしたのチームを設立、代表取締役社長に就任。現在、国内20拠点、台湾・シンガポールに現地法人を設立するまでに成長。1000社を超える中小・ベンチャー企業に対して人事評価制度の構築・運用実績を持つ。給与コンサルタントとして数々のセミナーの講師も務める。

 実際、経済産業省がまとめた2016年版「中小企業白書」においても、「中小企業でも賃上げは行われているが、人手不足感が強まっている」との見解が示されている。当然ながら働き手が足りなければ、伸ばせるはずの業績を伸ばせないことになってしまう。

「中小企業の場合、その背景には事業承継の問題もあるでしょう。団塊世代が70代に差し掛かるとともに、団塊ジュニアと呼ばれる彼らの子どもたちは40代前半になっています。親のほうではそろそろ経営を委ねたいと考えていても、『ここまで人手の確保に困っている状況において、果たして自分に社長が務まるものか……』と子どものほうは躊躇しがちです」(高橋社長)

 その結果、後継者不在で事業の存続を断念する企業が相次いでおり、人材を巡って、中小企業の明暗がくっきりと分かれているのが実情である。

 人手不足は深刻化の一途を辿っており、新たな人材を採用することにはかなりの時間とコストを費やすのが必至の情勢だ。ならば、すでに抱えている人材の流出を食い止め、彼らのやる気を引き出して生産性をアップすることのほうが現実的な方策と言えよう。

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