米国の政府債務上限問題が金融市場の懸念事項になってきた。スティーブン・ムニューチン米財務長官は、9月29日までに議会が上限を引き上げないと、政府の支払いが遅延する恐れがあると訴えている。
米財務省が工面しても、10月上旬には国庫の資金は底を突きそうだ。2011年7月と13年10月に同じ問題で混乱が生じた時は、米国債のデフォルト(債務不履行)が心配され、利回りが上昇した。国債の元利金支払いを他の米政府の支払いよりも優先させるべきだ、という議論もあるが、今のところムニューチン氏は政府の支払いに優先順位をつけることに慎重だ。
米議会は夏に休会となるため、9月29日までの議会の稼働日数はわずか12日しかない。しかし、ドナルド・トランプ米政権の議会に対するコントロール力は弱く、状況は混沌としている。米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月19~20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でバランスシートの縮小開始を決定したがっているが、もしこの問題で市場が不安定になれば、延期の可能性も出てくる。
世界の金融市場関係者にとって、米国でたびたび生じるこの問題は大きな迷惑だ。国債発行計画を含めた今年度の政府予算が議会で承認されているのに、債務上限の制約で予算執行が滞るというのは、制度の構造としても不合理である。ただ、米議会には国の借金を安易に膨らませてはいけないと信じる勢力がいて、米国債市場を“人質”に取って、財政規律をめぐるせめぎ合いを何度も演じている。