「日本化」の先を行く日本
「日本化」(Japanization)という表現が、市場やメディアをにぎわせている。しかし、そこは「問題先進国」の日本。簡単には他の追随を許さない。
日本自身の抱える問題自体がどんどん様相を変え、深刻度を増している。他国が「日本化」するとしても、日本自身は新たな「日本化」のフロンティア(?)を切り開くことであろう。
以下では、日本の実体経済、金融、財政政策、金融政策それぞれに見られる「日本化」現象の象徴的な側面を概観し、その上で「日本化」の先に待つものを展望する。
一例として、「高齢化」と「日本版エクソダス」(産業の脱日本)による経常収支黒字の消滅リスクを取り上げる。そのリスクが視野に入った途端に、いよいよ日本経済が“Going Concern(継続企業)”であるかを真剣に問わなくてはならなくなる。
実体経済に見る「日本化」(1)
初期段階の「3つの過剰の処理」は90年代に終了
1990年代初頭、日本のバブルは破裂した。その後の日本経済は、実に多くの側面で強い調整圧力に晒された。そのうち最も象徴的なのが、いわゆる「3つの過剰」(過剰債務、過剰設備、過剰雇用)の処理であろう。
中でも過剰債務と過剰設備の処理は、「バランスシート調整」と呼ばれ、バブル崩壊後の日本経済を象徴する表現として使われてきた。
「バランスシート調整」は、キャッシュフローと設備投資の関係、あるいは金利と設備投資の関係を一変させた。1980年代までは「キャッシュフローの増加→設備投資の増加」「金利の低下→設備投資の増加」という関係が見られた。とりわけ、日本では前者の関係が強く見られた。
ところが、1990年代に入ると「キャッシュフローの増加→債務の削減」「金利の低下→設備投資に影響せず」という関係が出現した。その結果、利下げという形での金融緩和が実体経済を刺激する経路が、極めて細くなってしまった。