志願者数が大きく増加する一方で、人気上位校を中心に合格者数は大きく減少した私立大学入試。来年は大幅に募集定員を増やす学校もある。私立大学の現状を見てみよう。

志願者増の背景にある 私大定員厳格化の動き

 今年2017年の私立大学一般入試の大きな特徴は、志願者が激増したことだ。8%ほど増えた。下の私大志願者数のランキングを見てほしい。今年の志願者トップ30を見ると、昨年より志願者が減ったのは千葉工業大と中央大の2校だけだった。国公立大の志願者が0.2%減だったのとは対照的な結果となった。

 志願者が激増した理由は3つ考えられる。一つは18歳人口の増加。昨年に比べて1万人ぐらい増の約120万人と見られ、受験生もそれに比例して増えている。

 2番目は文系の人気が高く、理系の人気が低い“文高理低”の学部選びになったことだ。私立大では文系学部の定員が大きいため、文系人気になると志願者が増える。この3年ほど、大学の文系卒業生の就職状況が好転し、文系学部志願者が増えた。私大で見ると、今年はとりわけ社会、国際系、経済、経営、商学部の人気が高かった。逆に理系は志願者が増えたものの、平均の8%増を下回る学部が多かった。

 3番目としては大手私大の定員の厳格化対策として、受験生が併願校を増やしたことだ。多くの私大は定員を上回って学生を入学させている。15年には定員の1.2倍まで入学させても国からの助成金がもらえた。これを徐々に減らして、18年には1.1倍までに減らす。さらに、19年には1.0倍で、定員通りに入学させることになる。これを超えると助成金はもらえない。助成金は平均で大学の収入の約10%を占めているから、助成金をもらえないと経営は厳しくなる。国公立大では大きく定員を上回って入学させている大学はなく、いずれも1.1倍以内に収まっている。

 入学者を減らすことは合格者を減らすことにつながる。昨年の入試でも早稲田大、慶應義塾大をはじめ多くの私立大が合格者を減らした。そのため競争率が上がり、入試が難化した。受験生はその対策として、今年は併願校を増やし、志願者増になったと見られる。

 この定員の厳格化は地方創生の一環として実施されている。地方創生とは東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけることで、日本全体の活力を上げることを目的にした政策だ。その中で、大学においても大都市圏の大手大学に学生が集中している現状を改善し、地方の大学の活性化を目指すのだ。そのため、大都市圏に多い入学定員が2000人以上の大規模大学から、厳しく入学者数を制限することになった。

 このような理由から、今年は私大の志願者が大きく増えた。近年の入試では、学費が安い国公立大の人気が高いが、現役で大学に進学したい受験生は多く、併願校として私大人気がアップした側面もある。