涙の会見で始まったお家騒動
当初は喝采を浴びた清武代表だったが……

 人事問題をめぐって勃発した巨人の渡辺恒雄会長vs清武英利代表兼ゼネラルマネージャー(GM)のバトルは、泥仕合の様相を呈してきた。

 ご存じの通り内紛を公表したのは清武代表だ。11日に自ら文科省で記者会見を開き、渡辺会長から、すでに決定していた来季のコーチ人事を鶴の一声で翻されたこと(ヘッドコーチを岡崎郁氏から江川卓氏にする)や桃井恒和オーナーを職から外すなど経営陣の人事を一方的に決められたことを告発。巨人の代表取締役でもない渡辺会長が強権を発動してすべてを決定することは許されない、と涙ながらに訴えた。

 翌12日には渡辺会長が反撃を開始する。談話という形で報道各社にファクスされた文書では、桃井オーナーの職を解くのは降格人事ではなく、清武代表の告発は非常識で悪質なデマであり、ヘッドコーチ人事についても事実誤認があると指摘。また、清武代表が例にあげた大王製紙やオリンパスのコンプライアンス違反と今回の問題は次元の違う話で、これは巨人や私(渡辺氏)に対する名誉棄損、と断じた。

 さらに清武代表のGMとしての資質にも言及。尊大であるとの悪評が立っているということまで明らかにして反論した。おそらく渡辺氏の言葉を側近が口述筆記し、表現をマイルドに書き換えたのだろうが、それでも清武代表をGM失格とまでいうのだから、渡辺氏の怒りがすさまじいものであることがうかがえる。

 これを受けて清武代表も文書で再反論。談話で渡辺会長はヘッドコーチ人事の報告を受けたことを認めているが、その後、記者の前では「何の報告もない」と語った。これは意図的に虚偽の事実を述べたことになる。読売新聞という我が国のリーディングペーパーのトップが嘘をついていることは大変遺憾だというわけだ。

 清武代表の告発には当初、多くの人が拍手喝采した。渡辺氏の暴君ぶりは世間に知れ渡っている。04年の球界再編騒動の際、オーナー側との話し合いを望む選手会に対して「たかが選手の分際で」と語ったことが、よく引き合いに出されるが、人を人とも思わない放言・暴言は数知れない。そんな独裁者ぶりを身内が暴いてくれたのだ。