いま、遺言や相続で悩まれている方が増えています。人それぞれ、いろいろな問題を抱えていますが、遺言があった場合となかった場合では、どう違うのでしょうか。ユニークな遺言の書き方を提唱する『90分で遺言書』の著者・塩原匡浩氏に、遺言のポイントを聞く。

安全で確実な遺言の方式
「遺言公正証書」

 ある暑い夏の日の午後、事務所に妙齢の女性から電話がありました。

「田上陽子といいますが、一昨年、遺言を公証役場で作成したの。でも事情があって、相談に乗っていただけませんか?」

 事務所にいらしたおふたりの女性は、母親の田上陽子さんとその娘の月子さんでした。席に着くなり陽子さんが、「じつは、遺言を作成した状況と今の状況がだいぶ変わってしまって。この遺言が今でも有効かどうかを見てほしいのよ」と遺言公正証書を差し出されました。

 手渡された書類には「遺言公正証書謄本」と書かれていました。

 ちなみに、公証役場で遺言公正証書は原本、正本、謄本の3部が作成されます。原本は公証役場に原則として20年(公証人法施行規則27条1項1号)保管されますが、実際は期限が過ぎても破棄はされず、遺言者が満120歳になるまで保管するとも言われます。

 正本と謄本は遺言者に交付され、遺言執行者がいる場合は正本を遺言執行者が保管しますので、原則、隠蔽されたり改ざんされたりする恐れはありません。

 また、遺言検索システムによって、被相続人の死後であれば、相続人など利害関係人は公正証書遺言があるかどうかを全国どこの公証役場からでも問い合わせすることができます。原本を電磁的記録で保存しているので、原本や正本・謄本が大規模災害などで減失した場合でも復元が可能です。