現在の介護が抱えているさまざまな問題のうち、ここでは、つぎの3点を取り上げることとしたい。
第1は、施設とサービスのバランスがとれていないことである。
かつて「ハコモノ行政」ということが言われたことがある。施設や建造物の建設自体が目的になり、施設の有効活用がなされず、維持運営費が財政を圧迫するという問題である。地方公共団体が豪華な多目的ホールなどを作りながら、そこでの催し物が貧弱という現象だ。
これと同じことが介護でも起こる。具体的には、有料老人ホームの過剰供給が起こる可能性がある。多目的ホールの場合には、使われない施設が無駄になるだけだが、民間主体が運営する老人ホームが経営破たんすれば、入居者は路頭に迷ってしまう。
第2は、補助のあるなしによって、需要が大きく影響されることである。具体的には、有料老人ホームで超過供給が発生する半面で、補助があるために自己負担が少ない特別養護老人ホームには、超過需要が発生するようなことである。
介護は、厚生労働省に任せるにはあまりに重要
第3の問題は、これらすべてが、介護という狭い観点から考えられていることである。上記のように補助があれば自己負担が少なくなり、需要が集中するのは当然のことだ。
この問題に介護保険の枠内だけで対処しようとすれば、保険料を引き上げるか、国庫負担を増やすか、あるいは介護職員の給与を減らすしかない。どれも本質的解決ではなく、問題を悪化させて悪循環に陥る可能性もある。
こうなる基本的な原因は、「増加する介護需要にいかに対応するか」という問題意識しかないことだ。
もちろん、そうした観点からの検討は、必要である。しかし、これでは展望は開けない。介護問題を議論するのが介護の専門家ばかりであれば、議論はこれ以上に発展しない。