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野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

急増する老人ホームに供給過剰が生じないか?
――介護を産業として捉える

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第39回】 2011年11月24日
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 現在の介護が抱えているさまざまな問題のうち、ここでは、つぎの3点を取り上げることとしたい。

 第1は、施設とサービスのバランスがとれていないことである。

 かつて「ハコモノ行政」ということが言われたことがある。施設や建造物の建設自体が目的になり、施設の有効活用がなされず、維持運営費が財政を圧迫するという問題である。地方公共団体が豪華な多目的ホールなどを作りながら、そこでの催し物が貧弱という現象だ。

 これと同じことが介護でも起こる。具体的には、有料老人ホームの過剰供給が起こる可能性がある。多目的ホールの場合には、使われない施設が無駄になるだけだが、民間主体が運営する老人ホームが経営破たんすれば、入居者は路頭に迷ってしまう。

 第2は、補助のあるなしによって、需要が大きく影響されることである。具体的には、有料老人ホームで超過供給が発生する半面で、補助があるために自己負担が少ない特別養護老人ホームには、超過需要が発生するようなことである。

介護は、厚生労働省に任せるにはあまりに重要

 第3の問題は、これらすべてが、介護という狭い観点から考えられていることである。上記のように補助があれば自己負担が少なくなり、需要が集中するのは当然のことだ。

 この問題に介護保険の枠内だけで対処しようとすれば、保険料を引き上げるか、国庫負担を増やすか、あるいは介護職員の給与を減らすしかない。どれも本質的解決ではなく、問題を悪化させて悪循環に陥る可能性もある。

 こうなる基本的な原因は、「増加する介護需要にいかに対応するか」という問題意識しかないことだ。

 もちろん、そうした観点からの検討は、必要である。しかし、これでは展望は開けない。介護問題を議論するのが介護の専門家ばかりであれば、議論はこれ以上に発展しない。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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