【IRレポート/王子ホールディングス】製紙の枠を超え、森林資源を生かして事業の多角化を推進! 株主還元も強化!!王子ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 CEO 磯野裕之(いその・ひろゆき)

“紙パルプ業界”で売上高規模が国内トップ、世界でも5位*を誇る王子ホールディングス。10年以上前から「もはや製紙会社ではない」を掲げ保有する大規模な森林資源を生かした事業の多角化を進めてきた。サステナブルパッケージ事業や木質バイオマス事業を展開することで、持続可能な社会の実現に貢献しながら成長を続けている。

【どんな会社?】
時代の変化に伴い事業を多角化、海外売上40%以上!

「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一の提唱により、1873年に設立。「製紙事業および印刷事業は文明の源泉」という渋沢の考えを反映し、当時、外国産しかなかった洋紙を国産で供給する日本初の株式会社として産声を上げた。

 以来、洋紙の生産と、新聞・書籍の普及を通じて日本の社会・経済の発展に貢献することを目指したが、時代の移り変わりや人々のライフスタイルの変化に伴い、白板紙や感熱紙、ネピアブランドに代表される家庭紙など、新たな製品を次々と開発してきた。

 トイレットロールやティシュなどの家庭紙および印刷用紙のイメージが強いが、実は段ボールや紙器といった生活産業資材、感熱紙などの機能材、植林・パルプをはじめとする資源環境ビジネスの売上高構成が大きい。

 10年以上前に、「もはや製紙会社ではない」と宣言し、需要縮小に備えて幅広い領域へと事業を拡大している。

 また、少子高齢化やデジタル化で国内の洋紙需要が縮小するなか、2010年以降、海外事業を強化。東南アジアやインドでパッケージング事業、ブラジル、ニュージーランドではパルプ事業を展開している。海外売上高比率は10年の10%未満から、24年には40%を超えた。

【何がスゴイの?】
民間企業として国内で最大規模の森林を保有する!

 紙は木を原料とする。「木を使うものには、木を植える義務がある」という考え方のもと、王子ホールディングスは創業以来、100年以上にわたって植林事業を継続してきた。現在、同社が「王子の森」と呼ぶ森林の総面積は国内外合わせて60万ha以上。これは、国内の民間企業が保有する森林面積として最大規模である。

 保有の主な目的は原料確保。再生可能な森林資源を持っていることが、同社の価値創造の源泉となっている。

 また、森林を健全な形で維持・管理し続けていることで、生物多様性の保全や、水源涵養、土壌保全、大気保全といった森林の公益的機能の発揮に貢献。同社は、国内に保有する約19万haの「王子の森」の公益的機能の経済価値を年間で約5500億円と試算している。

*「PPI Top75 Manufacturers(2024)」より。

――森林資源を生かして事業の多角化を進める王子ホールディングス。次ページでは、その具体的な事業内容に迫る。また、積極的な3つの株主還元策も紹介。