筆者は2012年の相場の大きなテーマを「株主還元」と見ている。その指標として、配当利回り(1株当たり配当金÷株価)に注目している。

 配当利回りに期待する理由は次の2点。第1に、歴史的な投資尺度は変遷という観点からだ。そもそも最も重視された投資尺度は配当利回りであった。

 1950年代半ばからの高度経済成長期以降は、PER(株価収益率、株価÷1株当たり税引き利益)が重視された。これはなぜか。経済環境がよいときには、企業が利益を株主に直接に支払わず、そのぶんを内部に蓄えて翌年の事業に投資したほうが、将来の利益がふくらみ、株主の享受分も増えると期待されるからだ。配当ではなく内部留保も合わせた利益に対して、どの程度株式が買われているかを見る流れになった。

 実際、右のグラフのように配当利回りで株式を選別することが難しくなった。日経平均株価が最高値を付けた89年末に東証1部上場企業で配当利回りが1%以上の銘柄は全体の1.3%。しかし、日本の経済成長が鈍化するなか、11年10月末で東証1部で配当利回りが3%以上の銘柄は26.4%となった。再び配当利回りで銘柄を選ぶことが合理的になった。