しかしHIT法で検証すると、受付から社会保険関係の書類提出までは情報がつながっているため、1人で担当した方が早いと判断できる。そこで、業務の効率化を優先的に考え、まずはベテランが受付から一連の処理を担当する役割分担に変更する。次に、若手には社会保険関係のスキルを学ばせる時間を設けるのだ。

マネジメントの改革を支援するツール

 このように、あらゆる視点から業務を改善・改革に導くことができるのがHIT法だ。しかし不思議なことに、HIT法を使って工数を4割ほど削減したのに、残業が減らなかったという会社があった。なぜか。

「業務プロセスの改善だけで、マネジメントの改革をしていなかったためです。人は、忙しければスピーディーに、時間に余裕があればのんびりと仕事をしてしまうものです。業務のムダを獲ったらそれで終わりではなく、マネジメントのやり方も合わせて変えなければなりません」(田代取締役)

 HIT法は単に業務を改善するだけのツールではない。人材育成、業務分担、リスク管理など、マネジャーがマネジメントをするための機能を豊富に備えていることは、今回紹介した通りだ。それらをきちんと活用すれば、マネジメントの改革も行える。

 連載第1回でシステム科学の石橋社長は、「日本企業にはマネジャーがいない。いたとしてもプレイングマネジャーになっている」と指摘した。HIT法を使えば、方針管理や人材育成といった本来のマネジメント力をマネジャーは手に入れることができるのだ。

 次回からは、HIT法を全社的に導入し、業務改革を実践している八千代工業の事例を2回にわたり紹介していく。