前回紹介した通り、八千代工業では約2年前にシステム科学のHIT法を導入し、全拠点の管理間接部門の業務改革を進めてきた。HIT法導入の背景にはどんな課題があったのか、また今後どのような活動を進めていくのか。加藤正彰社長と辻井元副社長にその狙いや展望を聞いた。
企業体質の強化にHIT法が使えると直感
八千代工業
代表取締役社長
そもそもなぜ八千代工業はHIT法を導入したのか。2009年6月にホンダの専務から八千代工業の代表取締役社長に就任した加藤正彰氏は、当時感じた問題をこう振り返る。
「八千代工業はホンダとの取引が売上の9割以上を占めており、ホンダへの依存体質がありました。しかし、リーマンショックの影響などで先行きが不透明な状況にあり、ホンダの言う通りにやっていれば何とかなるという時代ではなくなってきました。ヤチヨ独自の強い企業体質を作る必要があると感じました」
そんな加藤社長の前に現れたのがHIT法だった。システム科学の石橋社長から説明を聞いた際には、企業体質の強化には最適なツールであると直感。そもそも加藤社長は、ホンダ時代に間接部門の業務の可視化に挑戦した経験もあった。
「私はホンダではずっと研究開発部門にいましたが、人事を担当したこともありました。その際、間接部門の業務効率の悪さに疑問を抱いたのです。生産ラインは目に見えるものですから、改善もしやすく、常に改善して生産性を上げていこうとするマインドがあります。しかし間接部門にはそのような気概は感じられませんでした。間接部門の業務もチャート化すれば、改善へのマインドも高まるのではないかと思い、実際にチャート化を試みたのですが、すぐに異動になったためそれは成し遂げられませんでした。だからHIT法を知ったときは、“これこそ私がやりたかったことだ”とうれしくなりました」(加藤社長)
八千代工業
代表取締役副社長
辻井副社長も同様に、HIT法について当初から高く評価していた。
「HIT法は非常によくできたツールだと思いましたし、何よりもシステム科学の石橋社長の強い情熱に感銘を受けました。石橋社長もかつてトヨタ生産方式を実践してきた人ですから、同じものづくりの分野の人間として、HIT法のロジックもよく理解できましたし、現場を一緒に変えていこうという気持ちに共感しました」(辻井副社長)