東京六大学野球奪三振記録、新人王、MVP、最多勝、最高勝率……なぜ「ふつうの野球少年」が、ここまで来られたのか? 体格に恵まれていたわけでもない。誰もが認める豪速球があったわけでもない。注目の高校球児だったわけでもない。天才的なセンスや嗅覚があるわけでもない――。それなのになぜ? 球界きっての「思考派」にして、福岡ソフトバンクホークス現役エース・和田毅による初連載「練習について僕が思うこと」がスタートする!(構成/田中周治 写真/繁昌良司)
人より優れていない点が、僕の優れているところ
他のプロ野球のピッチャーと比較して、和田毅が優れている点を一つだけ挙げるとしたら――。
こう聞かれると僕は答えに窮してしまう。具体的に何が優れているのか、どこが勝っているのか……自分ではなかなか簡単に見つけられないのだ。
元来がネガティブ思考なので、逆に優れていない点なら頭にパッと浮かぶ。
まず、フィジカル的な能力でいえば、僕はプロ野球のピッチャーの中で、真ん中より下に位置しているだろう。筋力には自信がないし、身体のサイズも小柄な分類に入る。それゆえに当然、投げるボールのスピードも群を抜いて速いというわけではない。