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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第17回】 2012年2月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

SNSを自在に使いこなす若者が
SNSに傷つき悩んでいる

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文脈は無視され単語だけが重視される時代に

 先日、ダボス会議に出席した方と話す機会がありました。この方がそこで感じた「格差」は、「南北格差」でも「民族格差」でもなく、デジタルネイティブとそうでない人との「格差」だというのです。物心ついたときからネットを使いこなし、フェイスブックなどをベースに社会活動を行なっている若きリーダーたちには、話し方に同じような特徴がある、と指摘していました。

 それは、発言が言い切り口調で、ひとつのセンテンスが短いということです。アメリカ在住か中東の人か、男性か女性か、年齢はいくつかなどにはあまり関係ないのだとか。

 私も若い世代の人は、言葉を「文脈」ではなく「単語」で捉える傾向が強くなったような気がします。この傾向が広がっているのだとすれば、単語だけで文意を受け取られるという前提に立って発言しなければならない時代になっていくのかもしれません。

 すると、次のような表現は許されなくなります。

 「○○首相を馬鹿というのは言い過ぎですが、決して賢い首相ではないと思います」

 全体の文意を解釈するのではなく、「馬鹿」という単語だけがつかまえられて「○○首相を馬鹿呼ばわりした」と断定されてしまう、といったことがツイッターなどではしばしば起こります。いくら「~というのは言い過ぎですがと言っています」と否定のニュアンスを説明しても、「つまりは馬鹿ということじゃないですか」と解釈されてしまうのです。

 ニュアンスや行間に潜ませた意図を汲んでもらえなければ、電報のような最低限の単語を羅列した言葉しか通用しないことになります。上の表現を相手に誤解なく伝えるためには「○○首相はごく平均的な総理である」となってしまいます。

 これでは、何も言っていないのと同じことにはならないでしょうか。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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