FIT(フィード・イン・タリフ)制度がいよいよ今夏からスタートした。太陽光・風力などをはじめとした再生可能エネルギーの導入がさらに加速することは間違いない。供給の安定化に向けたスマートコミュニティ技術の今後について、気鋭の環境ジャーナリストにリポートしてもらった。
再生可能エネルギーはもはや高価な
発電設備ではない
7月1日から、わが国でも再生可能エネルギーの固定価格買取制度、いわゆるFIT(フィード・イン・タリフ)制度がスタートした。太陽光・風力などの発電電力を、長期間、優遇価格で買い取ることを電力会社に義務付ける制度だ。その買取価格が高めに設定されたこともあり、太陽光発電を中心に上々のスタートを見せている。1000KWクラスの大型太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画もめじろ押しである。
TWh(テラワットアワー)=10億kWh
出典:ドイツエネルギー・水資源協会
2000年にFIT制度を強化したドイツでは、風力発電に続き太陽光発電の設置ブームが起き、各地にソーラーパークやメガソーラー発電所の建設が進んだ。今年前半(1月~6月)には、とうとうドイツ国内の電力供給に占める再生可能エネルギーの割合が26%に達し、原子力の20%を大きく上回った。そのうち、風力が36%、太陽光が21%を占めた。
条件のよい場所での風力発電は、すでに天然ガスや石炭火力発電と同等の発電コストだといわれている。太陽光発電も、グリッドパリティ(購入電力価格と同等の発電コスト)を多くの国で達成しつつあり、今後もシステム価格の低下が予想されている。再生可能エネルギーはもはや決して“高価な発電設備”ではない。
エネルギーをめぐる課題と
スマートグリッド
ただ、課題もある。風力や太陽光の発電量は天候によって大きく左右されるし、電力の需要パターンに応じて発電してくれるわけでもない。不足をバックアップする仕組みが必要なのに加え、需要の少ないときに発電し過ぎても、に影響を与え、最悪の場合は停電を起こしてしまう。より広範囲で電力を融通し合えるよう、グリッドを強化することとともに、気象予測などとも組み合わせて、需要と供給の双方に関してきめ細かく管理できる仕組みが必要になる。こうしたシステムをスマートグリッド(賢い送配電系統)と呼ぶ。
住宅レベルではホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)という技術がすでにあるが、これに太陽光や燃料電池のような発電システムとバッテリーとを組み合わせ、ICT(情報通信技術)によって住宅レベルで電力需給をコントロールするのがスマートホーム。さらにこれを町レベルで実現しようというのが、スマートシティやスマートコミュニティというコンセプト。これらスマートハウスやスマートコミュニティがスマートグリッドで結ばれるというイメージである。