価格が高騰したことで、個人の資産運用でも金への投資が注目されている。金価格は、昨年1900ドル超の史上最高値を付けた後、1500ドル台まで下落、現在は1700ドル台で推移する。この先、金価格はどう動くのか。どう投資すればいいのか。金の第一人者、豊島逸夫氏に解説してもらった。
リーマンショック以降、金価格は大きく上昇し、昨年9月には1900ドル/トロイオンスを超える史上最高値を付けた。かつて200~300ドル台で長く低迷していたことを考えると、信じられないような出来事だ。
金価格上昇の背景には
ドルの希薄化がある
豊島逸夫
1948年東京生まれ。一橋大学経済学部国際経済専攻卒業。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)を経て、スイス銀行にて外国為替貴金属ディーラーに。2011年9月まではワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。豊富な相場体験を基に、「金の第一人者」として、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向に至るまで素人にもわかりやすく説く。
1948年東京生まれ。一橋大学経済学部国際経済専攻卒業。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)を経て、スイス銀行にて外国為替貴金属ディーラーに。2011年9月まではワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。豊富な相場体験を基に、「金の第一人者」として、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向に至るまで素人にもわかりやすく説く。
金価格が上昇した背景には、リーマンショック以降、ドルの供給量が増えたことがある。米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)では、この間にドルの供給量を8000億ドルから2兆8000億ドルまで増やした。この9月には景気を下支えするために量的緩和策第3弾(QE3)を導入したことで、ドルの供給量は、リーマンショック直後の3~4倍になる可能性も出てきている。
一方、金は毎年10%程度しか増えていない。採掘コストが採算ベースに乗る金は、ほとんど掘り尽くされたからだ。もちろん、金の埋蔵量がゼロになったわけではない。地中奥深く、あるいは海底奥深く掘り進めば、まだ金は存在する。だが、1トンの金鉱石から、わずか数グラムの金が採れればいいほうだ。したがって、そのような場所での採掘は、金価格がたとえ1万ドルになっても採算が合わない。
金が毎年10%しか増えないのにドルが300~400%も増えたのだから、ドル建ての金価格が上がるのも当然のこと。もっと言えば、金価格が上がったのではなく、ドルの価値が希薄化したと表現したほうが、適切かもしれない。