安倍政権の要求に応じて、日銀は2%のインフレ目標を中心とする政策協定を政府と締結する可能性が高まってきている。

 では、実際のところ、日本経済を2%程度のインフレの世界にするためには、どの品目をどの程度値上げすればいいのだろうか?

 すべての品目のインフレ率が平行移動することはあり得ない。グローバルに価格競争が激烈な耐久消費財(テレビなど)は、全体のインフレ率が5%を超えるような高インフレの新興国ですら、激しい値下がりを見せてきた。

 米国のケースを日本と比較してみよう。2002年以降の米国の毎月のCPI(消費者物価指数)総合前年比の平均は2.4%。最近はやや下がって2%前後で推移している。一方、02年以降の日本の平均は▲0.2%だ。

 自動車は、02年1月を100とすると、12年10月の米国は98.9、日本は98.4だ。テレビは、05年1月を100とすると、米国は12年10月は18.0、日本は12.1。やはり米国でも、それらの価格は上がっていない。となると、何が米国では値上がりを続けているのかを参考にする必要がある。

 同様に02年1月を100として12年10月の米国の価格を見てみよう(カッコ内は日本)。食料費133.6(101.9)、公共交通料金131.5(100.2)、電気料金146.2(105.0)、医療費149.6(日本は医療サービスで99.6)、大学授業料198.8(日本は私立大学授業料で104.9)、ガソリン332.2(145.6)である。

 このように生活コストに大きな影響を与える品目が、米国では大幅に上昇している。日本の家庭の支出における食料費、公共交通料金、光熱費、医療費、大学授業料、ガソリン代の合計は4割を超える。それらが上昇しないと、2%のインフレ目標達成は難しい。