日銀は超過準備に対して0.1%の利息を付与している。白川方明総裁はその金利(付利)を引き下げるつもりはないことを記者会見で再三主張してきた。
理由は第一に、短期金利がほとんどゼロ%になると、お金は市場でかえって流れなくなる(利息がほとんど得られないなら、市場で資金を運用する人は激減する)。第二に、このように短期金融市場の機能が停止した状態が長期化すると、将来、金融政策を正常化させたいときに大きなトラブルが起きる恐れがある(金融機関の現場に短期金融市場での資金調達・運用の経験者がいなくなれば、元に戻すのは大変である)。第三に、付利を下げても、銀行が超過準備を貸出に回す可能性は限りなく低い(現代の銀行は自己資本比率など様々な規制を受けており、優良な借り手がいなければ貸出を増加させることはできない)。
そういった白川総裁の考え方、「白川ドクトリン」はFRBのバーナンキ議長やイングランド銀行のキング総裁に影響を与えてきた。バーナンキは付利を日銀よりも高い0.25%に維持し続けており、昨年2月の議会証言では、「(付利を下げても)金利への効果、信用拡張の効果は極めて小さい。他方、ゼロ金利に近づくことが、様々な金融機関に悪影響を与えることを我々は懸念している」と述べた。イングランド銀行も同様の考えを持っており、付利を0.5%で維持している。ECBだけは昨年、超過準備への付利をゼロ%に下げたが、事情が異なる。欧州では信用不安で短期金融市場が壊れており、「守るべき市場機能」がなくなっていたのである。