世界第3位のたばこメーカー、日本たばこ産業(JT)。売上高、営業利益の半分を海外で稼ぐ。経営力を磨いたJTは、国内最大の売り上げのマイルドセブンブランドを変える賭けに出た。さらなる成長を目指したものだが、課題も残る。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

「親方日の丸の“金満企業”が、高値つかみの買収をした」──。

 1999年3月。米RJRナビスコの米国外たばこ事業会社(RJRI)を9400億円で買収した日本たばこ産業(JT)にはこんな非難が囂々(ごうごう)と浴びせられた。RJRIは世界シェア2位のウィンストン、7位のキャメルという大型ブランドを持っていたが、借金がかさみ営業力が落ちていた企業。それを高値で、しかも政府が株式の多くを保有する元公社企業が買ったことについての批判だ。

 それから14年余りが経過。JTはいまや国内で時価総額第4位(2013年9月26日現在)の歴然たる世界企業である。13年3月期の海外たばこ事業のEBITDA(利払い前・税引き前・償却前の利益)はRJRI買収直後の2000年の10倍以上に増加した。連結売上高の48%、EBITDAの55%を海外で稼ぐ。これだけ高い海外事業比率を持つ企業は、消費財分野はもちろん、日本企業全体でもあまりない。

 当時は総スカンだった“世紀の買収”だったが、「RJRIから得たブランド、人員、工場、流通網という国際企業になるためのプラットフォームなしには今の海外事業は存在し得なかった」と新貝康司副社長は振り返る。