仕事、お金、人間関係など、私たちを取り巻くリスクは社会とともに多様化しており、そうした個人に振りかかる個別具体的な問題を解決してくれる存在として、士業と呼ばれる専門家たちが存在する。
しかしながら、私たちはそうした専門家たちを上手に"使えて"いるとは言い難い。この連載では、年金のプロ、労働問題のプロ、回収リスク回避のプロなど、暮らしやビジネスにおけるリスクに関わる士業の人々の意見や助言を通して、その道のプロとの関係づくりを考えていく。
第1回目は、年金のリスクについて取り上げる。年金受給開始年齢のさらなる引き上げや給付額の減額など日本の年金制度は大きな困難に直面している。そうした中、企業や個人は年金とどのように向き合えばいいのだろうか。ファイナンシャル・プランナーとして資産運用のさまざまな問題に取り組む、アセット・アドバンテージの代表である山中伸枝さんに話を聞いた。
山中伸枝氏
――まず、整理の意味で日本の年金制度の現状について、ご説明をお願いします。
山中 国の年金制度には、公的年金(国民年金、厚生年金)、企業年金(厚生年金基金、確定給付年金、確定拠出年金<401k>)、自営業者らのための上乗せ年金(国民年金基金、確定拠出年金<401k>)などがあります。
日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入義務を負う国民年金(基礎年金)と、会社員と公務員が基礎年金の上乗せとして加入する厚生年金(公務員は共済年金)は、加入者と企業で負担する保険料、さらに国庫金(税金)を財源とし、高齢者に老齢年金を支払います。
財源の運用は国が責任を負い、加入者は法律で決められた受給要件を満たした場合、定められた金額を年金として受け取ることを約束されています。また、基礎年金は、加入期間に応じて受給額が決定され、厚生年金と共済年金は加入期間中に負担した保険料に応じて受給額が決定されます。
これらの年金はあらかじめ受給額の予測ができるため、老後資金の計画が立てやすいというメリットがありますが、近年国の財源の運用が非常に厳しい状況となっており、今後、支給額が減額される可能性も出てきています。一方、確定拠出年金は加入者固有の口座で拠出された資金が管理されるため、公的年金と異なり、国の運用状況によって給付額が減額されたりすることがありません。