確定拠出年金の税制優遇 三つのポイント

――確定拠出年金には、拠出時、運用時、受取時の三つのタイミングでの税制優遇があるそうですね。

山中 拠出時は、積み立ての金額が全額所得控除となります。例えば、将来の年金づくりと生命保険会社が提供する年金保険に加入している方も多いと思いますが、年間保険料の所得控除額は支払額全額ではなく年間5万円までと制限されていますので、確定拠出年金の優位性がご理解いただけるでしょう。(2012年以降の契約から4万円)。

 また、運用時に得た利益に税金がかかりません。確定拠出年金はあらかじめ用意された金融商品を自由に組み合わせながら運用できるのですが、例えば銀行預金で運用した場合、通常かかる預金利息に対する20%の税金が確定拠出年金ではかかりません。投資信託で運用しても同様に運用時の利益に対する税金がかからないため、加入者にとって大きなメリットになります。

 受取時には、一時金で受け取る場合、加入期間を勤続年数と見なした退職所得控除を利用できます。転職しても確定拠出年金に継続加入が可能なので、効率的に退職所得控除が利用でき、キャリア変更が不利益にならないという時代に合った制度といえます。さらに課税対象は控除後の半分の金額となります。年金として分割で受け取る場合も、公的年金等控除の対象となり、一般の年金保険等が公的年金等控除の対象外であることと比べると、かなりの節税効果が期待できます。

その他プロの視点1

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所 弁護士 田沢 剛 氏
 従来の企業年金制度下においては、中小企業や自営業者に制度が十分に普及していないことや、離職や転職をしたときに年金資産の持ち運びが十分に確保されない問題もありましたが、それらを克服すべく2001年10月から新たな選択肢として導入されたのが確定拠出年金の制度です。自己責任で運用しなければならないため、制度を利用するにはデメリットも含めて、その仕組みを理解する必要があります。特に「選択制」の場合は、給与の一部が掛け金に変わるため、「給与が減る」感覚もありますが、基礎となる収入額の減少により所得税や社会保険料の減少にもつながることを理解しなければなりません。また、将来の年金受給額に影響を与える点もありますが、それを上回るメリットがあるのであれば、積極的に加入を検討してもよいかもしれません。

その他プロの視点2

中小企業経営労務研究所 社会保険労務士 岡本 孝則 氏
 日本の年金制度については、すべての国民に対する年金制度にもかかわらず、国民年金への加入が漏れていたり、国民年金の納付率の低さが大きな問題となっています。国の発表によると、その納付率は、残念ながら約65%にとどまっている状態が続いています。また、企業に勤める社員が将来受け取ることができる厚生年金については、雇い主が厚生年金への加入手続きを怠るといった状況も少なくありません。国としても厚生年金加入についての企業への働きかけが十分とはいえず、企業に勤める労働者の約300万人以上が加入できずにいます。こうした状況も含め、年金の将来について、さらなる検討が必要だと考えます。

 次回は、老後資金をサポートする「確定拠出年金」のメリットに注目し、年金問題をさらに掘り下げる。