少し前まで専門家がこぞってデカップリング(米経済が減速しても、新興国の牽引で世界経済の成長が持続するという説)を唱え、新興国に投資すれば誰でも儲かるという錯覚を世界中が感じていた。
バブルの発生は誰にもわからないが、バブル発生を示唆することはできる。2007年の今頃からサブプライム問題は指摘されていた。米大手証券モルガン・スタンレーは2007年6月に、今が売り時というレポートで警告を出した。だが、自社でもポジションをカバーすることはできなかったのだ。振り返れば、今回の危機を懸念したレポートは数多くあったが、大多数がまだ上がると信じて疑わなかった。
運用競争が激化するなかで、たとえ1ヵ月でも運用を休むことは許されない。数ヵ月、1年の休みとなれば、運用市場からの退場を意味する。競争激化のなかで、人びとは知らずしらずのうちに非合理的な投資家に変貌していく。後から見れば相場の行き過ぎが明らかでも、渦中では非合理な投資行動をせざるをえない。運用者を過剰な期待とガチガチのルールで雁字搦めに縛り上げた結果は、結局投資家自身に返ってくる。
今回のサブプライム問題における主要諸国の株価指数の特徴は、過去と比較して上昇過程が緩やかなことだ。全体として過熱感を感じることなく急落に至っている。ぬるま湯に浸っていたら熊(ベア、弱気)の親子が帰ってきて大あわてという状態である。
過去のバブルを見るとだいたい同じような経緯をたどる。常に経済実態の要因はあるが、最終局面では投資家心理がバブルを助勢し、そして崩壊する。ここでは過去のバブルと今回を比較する。過去の日経平均株価の主な下落局面と、現在最も似た動きをしているのは1989年のバブルだ。やはり、不動産バブルの動きは古今東西似ている。仮に当時のバブルの1番底まで下がれば、現在の日経平均は1万円、2番底まで下がれば8000円を割る水準となる。
ただ、今回のサブプライムショックは、新興国や商品などオルタナティブ投資に及ぶ過剰流動性バブルとは、やや動きが異なる。過去のバブルを平均化したグラフと比べると、日経平均や米ダウ平均とほかのグラフは動きが異なっている。さほど下落していない。その意味では今後の新興国や商品市場の動きに注意を払う必要がある。必ずしも過去と同じ動きをすると思い込まないほうが賢明だろう。
(エクイティトレーダー 山独活継二)