2014年11月18日に安倍首相は2015年10月から予定されていた消費税再増税を1年半延期し、2017年4月に行うことを明言した。筆者は安倍首相の決断を歓迎したい。
なぜそう考えるか。理由は、8%へ消費税が増税された4月以降の日本経済の落ち込みが深刻であり、かつその後の持ち直しが極めて緩慢であるためだ。
1972年愛知県生まれ。1996年三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。2001年慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程(計量経済学専攻)修了。現在三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。早稲田大学経済学研究科非常勤講師(2012年度~)。専門は応用計量経済学、マクロ経済学、経済政策論。著作に『日本の「失われた20年」』(藤原書店、2010年2月、第4回河上肇賞本賞受賞、第2回政策分析ネットワークシンクタンク賞受賞)、『アベノミクスのゆくえ』(光文社新書、2013年4月)、『日本経済はなぜ浮上しないのか』(幻冬舎、2014年11月)等。
なぜGDP成長率は予想外の
2期連続比マイナス成長となったのか
2014年4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率7.3%減と、97年4月の消費税増税直後の97年4~6月期3.5%減を上回り、なお且つ東日本大震災直後の6.9%減を上回る悪化を示した。実質GDP成長率の落ち込みの主因は民間消費の大幅な落ち込みであり、民間消費の落ち込みをカバーすることが期待された設備投資や輸出も悪化した。
そして下支えとしての役割が期待された5.5兆円規模の経済対策も、公共投資が微増に終わったことから十分な効果をもたらさなかった。実質GDPを構成する項目の中で主にプラスに作用したのは、売れ残りを反映した在庫の増加と民間消費を反映した輸入の減少であって、いずれも良い材料とは言えない。
こうした中で2014年7~9月期の実質GDP成長率は前期比年率1.6%減となった(図1)。駆け込み需要と反動減の影響を慣らした2014年1~3月期と4~6月期の実質GDP平均値に復帰するために必要な7~9月期の成長率は3.9%であったから、政府が判断材料とした7~9月期の実質GDP成長率の結果からは、予定通りのタイミングで再増税に踏み切る判断を下すことは困難だ。