企業が成長を遂げるための経営戦略の1つとしてオフィスの役割が見直されている。中でも注目されているのが「クリエイティブ・オフィス」。社員たちの発想の場であるオフィス環境を快適にし、創造力を引き出す仕掛けを施す戦略的オフィスのことだ。オフィスを変えることで社員はどう変わるのか。また、そのためにどのようなオフィス作りが必要か。具体的に見ていこう。
社員の創造力、生産性を引き出す仕掛け
アメリカのグーグル、アップルなどグローバルで成長し続けている企業の強みは、サービス・商品にも表れている創造性の高さだろう。これまでなかった価値を作り出す、画期的なもの生み出す、といった創造力は企業の成長を促す。だが、この創造力はそう簡単に高められるものではないのも確かだ。
社員の創造性を育み、生産性を上げて成果を出す仕掛けを戦略的に施したオフィス、「クリエイティブ・オフィス」という考え方が今、注目されている。オフィスを単なる働く場所とするのではなく、企業を成長させる戦略の1つとして捉えるものだ。
具体的にはどのようなことを仕掛けるのか? 企業のオフィス移転を手がける富士ビジネスは、「クリエイティブ・オフィス」を数多く構築している。同社の石田光生・専務取締役 オフィス環境営業本部長は、「仕掛け」についてこう話す。
オフィス環境営業本部長
「アイディアは、デスクに座っていて出てくるものではありません。移動中に目にしたものや、人と話をしたことなど、様々なことが紐付けされて、1つのアイディアとしてまとまっていくものでしょう。ですから、コミュニケーションをとりやすい環境を作ることは非常に大切です。
たとえば、個人のデスクや設備などを割り当てず、共同で使用する『ノンテリトリアル・オフィス(ノンテリ・オフィス)』にすると、社員はその日の仕事内容、気分に合わせてオフィス空間を自由に活用します。固定化されている領域が少ないため、フレキシブルに行動しやすく、社員が頻繁に行き交い、立ち話や軽いミーティングをする姿がよく見られるようになります。
コミュニケーションが活発化することにより、ノウハウが共有され、新たな気づきが生まれやすくなる。それらが紐付いて、アイディアが沸くことも増えるでしょう。そうした積み重ねが創造性につながっていきます。
また、昨今は非常に経営のスピードが速いので、単に良いアイディアを出すだけでなく、スピードについていけるよう、フレキシブルに対応できる体制や構造も大事です。それらに対応できるオフィスをどう作るか。それが経営戦略の1つになってきています」
東京・中央区にある、営業部の拠点となっている富士ビジネスのオフィスもこうした仕掛けが戦略的に施されているクリエイティブ・オフィスである。「Studio F」と名づけられたこのオフィスは前述のノンテリ・オフィスだ。
仕切りのないオープンスペースには、好きな場所に座って作業を行うデスクスペースとさまざまな形態のミーティングスペースがある。一部、管理部門など固定化したほうがよい部署には決められた席があるものの、通り掛かりに声をかけやすいなどノンテリの中に効率よく溶け込む構造になっている。
「名称についている『F』には、富士ビジネスのFに加え、『face to face』、つまり『向き合う』の意味も込めています。コミュニケーションは、人と向き合うということです。お客様と向き合い、仲間と向き合う。さまざまな人と向き合いながらコミュニケーションをとることで、創造性はもちろん、良い成果を生むことにつながっていくでしょう。
また、向き合うのは人だけはありません。仕事に向き合うことでより生産性を高めたり、会社と向き合うことでモチベーションが高めることができる。このように社員1人ひとりが様々に『向き合う』ための仕掛けをちりばめているのがこのクリエイティブ・オフィスです」(石田専務)
ここからは「Studio F」を例に、戦略的に施されたオフィスの仕掛けを見ていこう。
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