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中原淳の学びは現場にあり!
【第1回】 2015年2月4日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授],井上佐保子

女子アナの話はなぜ伝わるのか
新人を喋りのプロに変える“耳トレ”の秘密


⇒検証現場『TBSアナウンス部』【前編】

テレビやラジオで活躍するアナウンサー。フリーのアナウンサーも増えていますが、ほとんどは就職活動を経てテレビ局に入社した社員アナウンサー、“局アナ”です。的確にニュースを伝えたり、臨場感溢れる実況を行ったり、個性を発揮して番組を盛り上げたり…と、テレビ、ラジオ番組に欠かせない存在であるアナウンサーたちはどのように育っているのでしょうか。

[写真] 眞嶋和隆

報道局の一角で、13時過ぎから番組の打ち合わせ開始。全体の進行確認だけでなく、各コーナーの担当ディレクターが代わる代わる打ち合わせテーブルに訪れて、その日の特集やニュースについて、キャスターたちに説明をする。質問や意見が次々と繰り出され、活気溢れる現場だ。

ICレコーダで育む「自分の声に気づく力」

「ウクライナの大統領選挙から一夜明けた26日、東部ドネツクの空港を包囲していた親ロシア派の武装集団に向け、ウクライナ軍が空爆に踏み切りました…」

 東京・赤坂のTBS本社11階にあるアナウンス部の会議室では、研修中のアナウンサー笹川友里さんが練習用のニュース原稿を読む声が響き渡っています。

 笹川さんは1年目に制作職を務め、2年目にアナウンス部に社内異動となったアナウンサー。一緒にICレコーダで録音した声を聞き、「どこが気になった?」と、尋ねるのは指導役の清水大輔アナウンサーです。

「親ロシア派の『親』の部分が少し強かったように思います」「そうですね、他には?」清水さんは再度、録音した音声を流します。原稿を読み、録音した音声を聞いて、発音や発声、アクセントで気になる部分を修正してまた原稿を読む……。アナウンスの基礎を学ぶ研修は、こうした地道な訓練の繰り返しだといいます。

「新人アナウンサーへの研修は約3カ月間。新入社員研修を終えた月から8月までです。その後、クッション期間の9月を経て、番組改編期の10月から本格的に番組のレギュラーに入る、という流れが一般的です」と話すのは清水さん。

 冒頭で紹介した笹川さん他、新人アナウンサーの研修を担当します。清水さんは、札幌テレビ放送を経て1993年にTBS入社。主に野球、サッカー他、さまざまなスポーツ中継などを担当するベテランです。

 3カ月間の研修中は、1コマ1時間半の授業を1日3コマ受講します。研修のプログラム、テキストは長年、改訂を重ねながらTBS のアナウンス部で受け継がれてきたオリジナルです。

 アナウンサーの研修は、まず腹式呼吸でお腹から声を出す練習から始まります。「演劇も歌も同じかと思いますが、浅い呼吸で発声すると、喉が開かず、いい声が出ません」。続いて、正しい口の形で正しく発音する練習をします。人によって癖があったり、間違った発音をしていたりするので、日本語の発音を一から学び直します。

 

 

中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 

井上佐保子(いのうえ・さおこ)

1972年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。通信社、出版社勤務を経て、2006年にフリーランスライターとして独立。企業の人材育成、人材マネジメント、キャリアなどをテーマとして、企業事例、インタビュー記事などを執筆。人事・人材育成分野の書籍ライティングも手がけている。


中原淳の学びは現場にあり!

このコーナーでは、毎回、“学びに満ちた仕事の現場”を訪問し、WorkplaceLearning(職場の学び)の観点から、検証していきます。日頃はあまり目にすることのないさまざまな職種の「現場」。そこでは、どのような仕事がなされ、人はどのようにして知識やスキルを学び、育っているのでしょうか。企業の人材育成では見落とされがちな「学びのスイッチ」を掘り当てます。

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