『フォーブス』誌発行人を務め、連続起業家でもあるリッチ・カールガードは「成功し続ける企業」の5つの条件を、全米企業への取材から明らかにした。本連載は『グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』からそのエッセンスを紹介する。第1回は、かつて成功した企業が凋落するのはなぜか? がテーマだ。

デル、コダック、マイスペースが
2000年代に失速した理由

 企業で「イノベーションが自動的に行われる」のは、生物の体内で健全な免疫反応が起きるのによく似ている。長期にわたって健康な人は、ときおり健康を崩すということがなく、およそいつも健康だ。彼らの免疫システムはほとんどの脅威を当然のように撃退するのである。

 それは企業についても言えることなのか、と類推するなら、そのとおりだ。優れた企業では、脅威に対してイノベーションを行うのは当たり前のことなのである。

 では、ある企業のイノベーションがほかの企業よりめざましいのはなぜなのか。それだけの活力を生み出す源は何なのだろう。
 CEOだろうか。なかにはそんな企業もあるだろう。しかし、比較的少数のそうした企業にしても、CEOが永遠にその職に就いているわけではないことを忘れてはいけない。

デル、コダック……<br />2000年代に失速した企業に学ぶ教訓とは?

 では優れた戦略が活力源になるのだろうか。そう考える人は、自分の戦略がいつも正しいと信じていることになる。しかし産業のどの時代においても、展開した戦略が常に優れていた企業など一社たりともない。安定しているように見えていたのに、戦略的に間違った選択をして突然破綻した企業は、過去にごまんとある。イーストマン・コダック、デジタル・イクイップメント(DEC)、マイ・スペースなどがいい例だろう。

 ならば、非の打ち所のない実行力が活力源だろうか。
 一九九〇年代に急成長したデルは、徹底したコスト管理や、サプライチェーンの支配、配送のスピードなどの実行スキルにおいて、伝説に残るほどの完璧さを見せた。デルのそつのない作戦は、デスクトップ型パソコンやノート型パソコンの時代、そしてその両方を企業が社員向けに購入する時代において素晴らしい効果をあげた。しかしその後、突如として、完璧な実行モデルをもってしても、デルは成功し続けられなくなってしまった。スマートフォンやタブレットが主流になり、また社員が自分の所有する機器を職場に持ち込むようになったためだった。

 では最後にもう一つ、テクノロジーの達人を大勢雇って、ビッグデータやクラウド、モバイル、ソーシャルでの強みを活かすことが活力源になっているのだろうか。
 そうだ、それにちがいない! いやいや、よく考えてみよう。テクノロジーにおける優位性は昔ほどは続かない。数週間や数ヵ月は可能でも、数年や数十年も続くことは無理なのだ。