JFEシビルは鉄鋼を造ること、活用することにたけた技術者集団。JFEグループが開発した独自の基礎工法を取り入れた立体駐車場は、信頼が厚く官公庁の顧客も多い。

 自走式立体駐車場「メタルパーク」やシステム建築「メタルビル」を手掛けるJFEシビルは、鉄鋼大手JFEスチールのグループ会社で、グループ内唯一の総合建設会社だ。駐車場メーカーとして評価の高かった川崎製鉄系の川鉄機材工業の立体駐車場部門と、日本鋼管系の日本鋼管工事の立体駐車場部門が統合したもので、技術力、ノウハウ、実績、認定駐車場の種類においても業界ナンバーワンを自負する。

鉄鋼を知り尽くした
技術者集団が造る

原 清孝
システム建築事業部
システム建築営業部
立体駐車場営業グループ長
副部長

 立体駐車場には総重量2トン、2.5トンクラスの自動車が何百台と駐車する。地震や津波に耐えるには、その重さを支える建物のどの部位にどの鋼材を使うのか。常時風雨にさらされる鋼材にはどのような防錆対策を施せばよいか。そこには、鉄鋼メーカーしか知り得ないノウハウがあるという。

 原清孝・立体駐車場営業グループ長は「鉄鋼メーカー系の当社は、さまざまな鋼構造の建物を建設しています。鉄を知り尽くした技術者が設計・施工・商品開発を行い、高い技術力を生かした独自の認定商品や工法を用いて、お客さまの要望に応えています」と、鉄鋼メーカーでありながらゼネコンであることの強みを強調する。

 ゼネコンの技術が目に見える形になった例に、柱と杭を一体化した独自の「いちいち基礎工法」がある。柱と杭を一体化させる基礎工法は、大きなコンクリートの基礎梁が不要となるため、コストダウンと工期短縮を図ることができる。さらに掘削土量が少ないので、残土処理も最小化でき、環境への負荷も低減できる。

ゼネコンならではの独自工法
「いちいち基礎工法」

杭と鉄骨柱を一体化させる工法。在来工法での複雑なフーチングと基礎梁が必要ないため、人件費や材料費を抑えられ、掘削土量も低減。倉庫や工場などのシステム建築にも広く使われている。

 いちいち基礎工法はシステム建築の分野で10年を超える採用実績があり、駐車場に応用され始めている。その代表例が、神奈川県江の島の「江の島なぎさ駐車場」である。砂地という軟弱地盤の上に、冬の閑散期に短工期で完成させるという難題もこの独自工法で解決、わずか75日の工期で施工した。利用者にとっては、平面駐車場があった場所に突如、立体駐車場が出現したという感じである。

神奈川県江の島にある「湘南なぎさパーク・江の島なぎさ駐車場」。海岸沿いの軟弱地盤を舗装した平地駐車場から1層2段の立体駐車場になり、行楽シーズンの渋滞緩和の一助となっている

 このように駐車場という製品の川上から川下まで全てを手掛けられることから、官公庁や交通・鉄道といった公共施設顧客の信頼も厚く、最近では、8月にオープンした成田空港第2ターミナルの北附属棟、年末には一部供用が始まる那覇空港の5層6段の新立体駐車場、2016年3月開業予定の北海道新幹線新函館北斗駅前の立体駐車場などの事例がある。

 また北海道から九州・沖縄までをカバーする230社の協力代理店の存在も欠かせない。彼らは特に地元自治体に強く、今年開通した北陸新幹線の新高岡駅南側の立体駐車場は、協力代理店との協業による成果である。