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激動の2012年を前に世界は

2012: Year of Turmoil

谷口智彦
2010年8月12日
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 今から2年先の世界は、一部に「2012年問題」として取り沙汰する者があるように、秩序の一大変動期を潜り抜ける(といってもこの年「マヤの暦」が終わり、世界が終末を迎えるといった類の“ニューエイジ譚”ではない)。

選挙、選挙の「惑星直列」

 2012年、米国とロシアで、大統領選挙がある。中国共産党は、第18次全国代表大会(18大)を開き、指導層を入れ替える。世界第2の強国となって後、中国が初めて迎える権力継承となる。

 この3つが揃うだけで、既に惑星直列的なインパクトがある。

 そこへ持ってきて、フランスにも大統領選挙がある。誰を選ぶかは、欧州統合の将来や大西洋関係に小さくない影響を持つこととなろう。

 日本の近隣、東アジアはもっとすさまじい。韓国で大統領選挙、台湾で総統選挙がそれぞれある。政治の季節はさぞかし暑くなるだろう。香港は、議会の選挙を予定している。

 各国で異なる選挙周期の倍数がこれだけ揃い、選挙、選挙、また選挙となる2012年は、まさしく「世紀の」エレクション・イヤーだ。

 ことに東アジアの各選挙は、中国における権力の移行を磁力源としつつ、互いに影響し合うプロセスとなるだろう。ここでのワイルド・カードは、もちろん北朝鮮である。

 中国は、今年5月北京を訪れた金正日に対し、以後平壌の内政過程へおおっぴらに介入していくことを承諾させた。18大開催をメドに、何らか変化を起こそうとする腹かもしれない。つまり今後の2年で、北朝鮮に大きな変動があって不思議ではない。

戦後、いや近代神話の後退

 しかも一昨年(2008年)から去年までの短い期間に、いくつかの戦後神話が音を立てて崩れるか、有効性を大きく失った。

 結果は、世界勢力地図自体に起きつつある、歴史に稀な書き換えだ。いやがうえにも不安を持つのは、日本を含む既成秩序の陣営にいた者、追いつかれた側である。

 意味をなくした最たるものは、G7体制だろう。

 これは日本にとって、少なからず立場を失わされる事態だ。

 G7の一翼に列したことは我々にとって、「世界の一等国に伍す」国民的悲願を、国際連盟からの脱退やら敗戦やらを挟み、やっとのことで実現したようなものだった。

 国連安保理に定席のない日本にとってはなおのこと貴重な舞台だったのに、G7の隊伍自体が、金融危機の渦中で総崩れとなり、20カ国がひしめき合う雑踏(G20)へ半強制的に混入させられたわけである。

 G7体制の崩壊とは、“the West”が近代以降独占してきた指導的地位の崩落である。壊れた神話とは従って、戦後にできたというより、近代総体の産物だったと言った方が正しい。

 米国の地位低下がこれに加わる。アメリカとは、登攀不能の高峰だったはずが、随分と身をこごめてしまったかのような・・・。GMの崩壊と、軌を一にするごとく中国が世界最大の自動車市場として現れたことは、幾重にもシンボリックだった。

緊縮と軍縮

 試みに、「austerity」という言葉の頻出度を見てみた。austerityとはいま英語メディアでほぼ連日目にする単語で、「緊縮財政」だとか「耐乏」を意味する。「慎ましい」という、少しばかり倫理的響きを含んでもいる。

 この、オーステリティなる言葉を含む記事が5年前(2004年8月5日~2005年8月5日)に世界中で何本登場したか、データベースのFactivaを用いて調べてみると、7199本だった。

 5年後の2009年8月5日から2010年8月5日までについて同様に数えてみたら、実に5万2883本。7倍以上増えている。これこそは時代のバズワードであろう。

 the Westは富裕の代名詞であり、米国はそのチャンピオンだったのに、軒並み金欠に苦しんでいる。

 こんな場合に切られるのはバターよりガンであるのが常だから、例えば英国で深刻な議論となっているのは、独自の核抑止力を持ち続ける必要の可否を巡ってだ。米軍の装備も、しばし充実発展をやめざるを得ない。

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谷口 智彦 Tomohiko Taniguchi

日経ビジネス誌主任編集委員などを経て2005年8月~2008年7月外務省外務副報道官。記者時代に米プリンストン大学フルブライト客員研究員、上海国際問題研究所客座研究員、米ブルッキングズ研究所招聘給費研究員、ロンドン外国プレス協会会長など歴任。現在慶應義塾大学大学院 SDM研究科特別招聘教授、明治大学国際日本学部客員教授など。

 


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移り変わる世相を映し、次々生まれては消えてゆくのがbuzzword(話題の流行語)。このコラムでは国際情勢に精通した筆者が、海外で静かに話題に なっているbuzzwordから激変する世界情勢を読み解く。隔週木曜日掲載。

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