データ駆動型社会の進展とともに、企業のシステムやデータが外部からの攻撃やウイルス感染などの脅威にさらされる危険はますます高まっている。経営者はそうしたリスクとどう向き合い、対策を図るべきなのか? 一般財団法人インターネット協会理事長の藤原洋氏(ナノオプト・メディア代表取締役社長)に聞いた。

IoT、AIの拡大で
企業のリスクが高まる

インターネット協会理事長
Interop Tokyo 2016実行委員
ブロードバンドタワー
代表取締役会長兼社長CEO
ナノオプト・メディア
代表取締役社長
藤原 洋氏

 ビジネスにおいてIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用する動きが急速な広がりを見せるとともに、「データ駆動型社会」という新たな概念が生まれている。

「ビッグデータ解析に代表されるように、過去には考えられなかったほど膨大な情報を瞬時に集め、高速処理して、製品やサービスの付加価値を高めたり、よりタイムリーなマーケティング活動に利用したりすることが、もはやビジネスにおける当たり前の取り組みになっています。世の中のあらゆるものがデータに基づいて動く『データ駆動型社会』が現実化しつつあるのです」

 そう語るのは、一般財団法人インターネット協会理事長の藤原洋氏。

 背景にあるのは、コンピュータの処理性能が2年で約2倍になるというムーアの法則で、最近では、同法則が、ストレージ容量とネットワーク伝送速度にも成立するようになったことだ。

「この法則によれば、企業のデータの保存コストは10年間で約32分の1まで下がります。その結果、いままでのように膨大なデータを捨てる必要がなくなり、むしろ利活用することで新たなビジネスの成長機会をとらえる環境が整ってきました。しかしその半面、利活用が進めば進むほど、企業のシステムやデータが外部からの攻撃やウイルス感染などの脅威にさらされやすくなるリスクは高まります。経営者はこれまで以上に、そうした危機に対する意識を高め、有効な対策を講じる必要があるのではないでしょうか」と藤原氏は語る。

 ここ数年、大企業や特殊法人などからの個人情報の大量流出、システム攻撃による業務の混乱といった事件が相次いでおり、企業の情報セキュリティに対する意識は以前に比べれば高まっているように思える。

 しかし、「そもそも日本では、IT技術者の約4分の3はIT企業で働き、残りの約4分の1はその他の企業で働いているのが実情。欧米など海外の構成比とは正反対です。つまり、日本企業はシステム構築やセキュリティ対策を自前で何とかしようという意識が海外企業に比べるとまだまだ低い。そのため、どうしても脅威への対策が後手に回りやすいのです」(藤原氏)