生涯を伝道と医療活動にささげた創立者・ランバスの志を受け継いだスクールモットー“Mastery for Service”(奉仕のための練達)の下、「世界市民」の育成に取り組んできた関西学院大学。来年度から大学院の副専攻プログラム「国連・外交コース」が創設され、新時代を担うグローバル大学としてさらに進化する。

関西学院大学 村田俊一総合政策学部教授 神余陸博副学長

 国連などの国際機関で活躍し、世界に貢献する日本人を輩出する――。2017年4月、関西学院大学大学院で画期的な教育プログラム「国連・外交コース」が始動する。国連職員や外交官といったグローバルかつ公益性の高い職業に就くための実践力を磨くコースだ。

 これは、同学が推進する「国連・国際機関等へのゲートウェイ創設構想」の中心を成すもので、文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業に採択された「グローバル・アカデミック・ポート」を支える大きな柱の一つだ。神余隆博副学長はコース創設の背景をこう話す。

 「世界の多極化が進み、多国間の利害を平和的に調整する国連の役割はますます重要になっています。しかし現在、国連機関で働く日本人は約800人。日本の人口や経済規模を考えるとあまりに少ない。日本人職員を増やすことは国家的な課題なのです」

 しかし国連職員になるためには、修士・博士レベルの専門知識と、それを生かした職務経験、英語力、多文化環境でのコミュニケーション能力や活動経験といった高い能力と経験値が求められるため、かなり計画的にスキルアップしていく必要がある。

 「日本人の場合、大学卒業後に海外の大学院に進学して修士以上の学位を取り、さらに企業などで実務経験を積んでから外務省の『JPO派遣制度※』を経て正式採用を目指すルートが一般的です。しかし、海外の大学院を経由しなければ必要なキャリアを得にくい現状のままでは、国連で活躍する日本人を増やすことはできません。やはり、日本の教育機関から真っすぐ国連を目指す道が必要なのです。幸い本学には元国連職員の教員が多く、国連との関わりも深い。先駆的で実践的なプログラムを作る自信がありました」

 同学では1997年に学生を国連本部に派遣する「国連セミナー」を立ち上げており、04年からは国連機関の一つである「国連ボランティア計画(UNV)」と連携して多くの学生を途上国に送り出してきた。これらの実績に加え、同学の教育の根底に流れる「志」こそが、このコースを生み出す原動力になったと神余副学長は言う。


※JPO派遣制度/国連関連機関の日本人職員を増やすために、外務省が費用を負担して若手人材を国連機関に派遣する制度。国連機関の日本人職員(専門職以上)の4割以上をJPO経験者が占めている。