企業規模を問わず労務問題が深刻化している。背景にある要因は多様で、かつ複雑に絡み合っている。それゆえに、労務問題や労使紛争が経営に与えるリスクも飛躍的に拡大している。事業主側、経営側としてどのように対応すべきなのか。数百社を超える企業の人事業務プロセス改善のサポート実績を持つクロスヴィジョンインターナショナル(CVi)が、企業が直面する労務問題の現状と課題について特定社会保険労務士の山岡正義氏に聞いた。
史上最多を記録する労使紛争件数
内容も多様化している
――大企業や中小企業を問わず、さまざまな労務問題が増加傾向にあると聞きますが、どのような状況になっているのでしょうか。
厚生労働省は2001年10月に「個別労働紛争解決制度」を創設し、職場での紛争の迅速な解決を進めてきました。
最新状況の取りまとめによると、2011年度の総合労働相談件数は110万9454件で、4年連続で100万件を超えました。さらに、雇用形態や労働条件などについての個々の労働者と事業主との間の具体的な紛争数を示す「民事上の個別労働紛争」の相談件数は25万6343件で、それに対応した助言・指導件数、あっせん申請受理件数のいずれもが過去最高を記録しています。
日本での雇用保険の適用事業所数は206万を数えます。その数と、労働相談件数などの数を比較すると、今、労務問題がいかに深刻化しているかがうかがえます。
紛争内容では、多様化の傾向が見られます。たとえば制度発足直後の2002年度と、直近の2011年度を比べると、かつては最も多かった「解雇」トラブルが10ポイント近く減少している(28.6%→18.9%)一方で、「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」は急増しています(5.8%→15.1%)。また、「自己都合退職」にかかわる紛争も増えています。
2011年度では、解雇、いじめ・嫌がらせ、労働条件の引き下げ、退職勧奨・出向・配置転換が、紛争課題として目立っています。