ヨーロッパのマスメディアのあいだで最近、マイナス金利政策が話題になっている。10年近く前に日本で行なわれていた議論とそっくりの話が繰り返されている。

 きっかけはスウェーデンにある。同国の中央銀行リクスバンクは、7月の金融政策委員会で政策金利であるレポ金利を0.25%に引き下げると同時に、預金ファシリティ(同行が銀行から預かる超過準備に利息を支払う制度)の金利を▲0.25%に決定した。

 マイナス金利ということは、準備預金を同行に預けた金融機関は、利息を支払わなければならない。世界で初めての政策だと英「フィナンシャル・タイムズ」等は賞賛した。マイナス金利をいやがる金融機関が、超過準備を市中に流すことを促す政策だと報じられた。

 ところがである。当のリクスバンクが、9月2日に、マイナス金利政策は意図していないことを説明する声明文を発表したのである。「預金ファシリティのマイナス金利は銀行に影響を与えていない。制御システムは、従来とまったく同じ方法が継続されている」。

 同行は、銀行の手元に超過準備がほとんど残らないよう、短期の資金吸収策を使って余剰資金のほとんどを吸い上げている。マイナス金利が適用される超過準備は無視できるわずかな残高でしかない。