【第20回】 2009年07月23日
「自信が持てない」―現代の「ウツ」に潜む悩み
――「うつ」にまつわる誤解 その(20)
「自信が持てない」「自分のことが認められない」といった問題は、現代の「うつ」を考えるうえで、どうしても避けて通れない重要なテーマです。
このような問題を抱えている方たちは、学業や仕事などで成果を上げて代償的に自己評価を維持しようと、無理を重ねがちです。しかし、この努力にはどうしても限界があって、ある時点でブレーカーが落ちたように「うつ」状態に陥ってしまうケースも少なくありません。
以前(第5回)にも触れましたが、現代の「うつ」にはさまざまな病態があります。その中でも、新しいタイプの「うつ」(非定形うつ病、パーソナリティ障害、摂食障害など)の場合には、いくら薬物療法や休養を行なってもそれだけではなかなか回復が難しく、この内的なテーマがきちんと扱われない限り、状態は一進一退を繰り返してしまうことが多いのです。
今回は、この「自信」ということをめぐって考えてみましょう。
「自信」に根拠は要らない
「自信が持てない」と訴えるクライアント(患者さん)に対して、私はよく「どのようにしたら自信が持てるようになると考えていますか?」と質問を投げかけてみることがあります。これに対して大抵は、周囲から評価を得られるような成果を上げたり、何かを成し遂げられたりしたら、こんな自分に変われたら……、といった答が返ってきます。
では、そもそも「自信」とはどういうものなのでしょうか。
「自信」は「自分を信じる」と書くわけですが、この「信じる」とはどういうことなのか、これが「自信」を考えるうえで重要な鍵になります。
目に見える努力や成果、あるいは周囲からの評価を拠りどころにすることは、いわば、自分の価値についての「保証書」や「鑑定書」を求めることだと言ってよいでしょう。しかし、もしそういう「保証書」が得られたならば、もはやそれだけで十分に「保証」されているわけですから、わざわざ「信じる」という大げさな言葉を持ちだす必要はないわけです。
つまり「信じる」ということは、本来、「保証」や「根拠」を必要としないものだと考えられます。
たとえば「神を信じる」という人は、「神の存在証明があるから信じます」というわけではないでしょう。つまり「信じる」というのは、対象についてのその人の態度や決意を表わす言葉なのです。
よく「根拠のない自信」という言い方が人を揶揄するように用いられることがありますが、このように考えてみると、そもそも「根拠のない」のが「自信」本来の姿だったわけです。
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著者プロフィール
- 泉谷閑示
(精神科医)
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ
この連載について
いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。
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