“プレミアムSUV”のパイオニアとして、常にトップを走り続ける「レンジローバー」。英国を代表する伝統的名車でありながら、革新と進化を続けるスタイルは、時代のリーダーたちに支持されてきた。ウミトロン代表の藤原 謙氏もその哲学と共鳴する一人だ。
境界を取り払うときビジネスはスケール化する
「宇宙から地球を見ると、国境線はなく、全てが相互に関連していることを改めて感じます。境界は人が勝手につくり出すもので、境界の外側には課題が残ってしまう。ビジネスにおいても、境界を取り払うことで、より大きな社会的インパクトを生み出すことができると思います」
そう語るのは、ウミトロン代表の藤原 謙氏だ。
これまでに、産業革新投資機構などから総計24.4億円の資金調達を完了したウミトロンは、IoTやAIなどのテクノロジーと、衛星リモートセンシングを活用して、持続可能な水産養殖を地球に実装することを目指す注目のベンチャー企業だ。
新たに地球規模の事業を創出し、組織を率いる次世代リーダーの経歴は異彩を放つ。
「大学院で工学を学び、JAXA(宇宙航空研究開発機構)で人工衛星の研究開発に携わりました」
その後は、シリコンバレーで宇宙事業を手掛けるベンチャーの創業支援、商社で衛星を活用した農業ITベンチャーの新規事業開発に従事した。
「そして、いよいよ自分自身の事業を起こそうと考えたとき、『宇宙衛星の知見』と幼い頃を過ごした『瀬戸内海での原体験』が重なり、ウミトロンを設立しました」
そんなウミトロンが挑むのは、「食料生産」という地球規模の課題だ。人口減少の日本では、食料生産に関わる1次産業の効率化が喫緊の課題であり、人口が増加し続ける地球に焦点を合わせると、需要増加による「タンパク質不足」が問題となっている。
――限られた陸地ではなく、地球の約7割を覆う海から何かできないだろうか。
藤原氏はその答えを宇宙からの視点で探った。
「養殖業は環境負荷が低い食料生産の方法です。そこに宇宙技術やテクノロジーを活用して生産性を上げることで、環境に配慮しながら食料生産の課題を解決できるのではないかと考えました」
大分県生まれ。瀬戸内海のそばで幼少期を過ごす。東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻修了。カリフォルニア大学バークレー校ハースビジネススクールにてMBAを取得。JAXAでは天文衛星や小惑星探査の国際プロジェクトに参画。その後、三井物産にて農業ITベンチャーへの投資や衛星データを用いた精密農業サービスの海外展開に従事。2016年、水産養殖向けのデータサービスを行うウミトロンを共同創業。
強い組織の条件とこれからのリーダーシップ
ウミトロンの組織の強さは「多様性」と「共感」にある。
天候学のプロ、生物研究専攻、メガバンク出身者⋯⋯。国籍や職歴を超えて一つのミッションの下に集まったメンバーについて、「例えるなら豊かな海洋生態系。互いにつながっていて影響し合っている」と藤原氏は評する。
「地球規模の社会課題の解決は到底1人ではできない。多様なメンバーがそれぞれの知見から意見を出し合うことで、1人では見落としてしまう問題も拾うことができると考えます」
そんな、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーをつなぐのが、「地球の課題を解決したい」、そして「海が好き」という思いだ。それは藤原氏の創業時の思いと一致する。
「スタートアップという垂直立ち上げが必要な事業の中で、最初から一人一人のメンバーがミッションに共感できている組織は強いですね。互いにリスペクトしながら本気で議論を交わしています」
そして、少数精鋭の組織を束ねるリーダーとして意識するのは「情報のオープン化」だ。
今、多くの企業に求められている新規事業の創出や事業変革だが、社内外、または部署間を超えた多様なメンバーとコラボレーションする上で、最も基本でかつ重要な部分である。
「情報の非対称性があると正しい議論は行われません。例えば、誰かに『社長がこう言っていたよ』と言われてしまうと、そこで議論は終わってしまう。専門性のあるメンバーの能力を引き出すために『情報の偏りのない環境づくり』がリーダーの一つの役割だと思います」
次世代へつないでいくことの意味
社会課題、しかも地球規模の問題に挑むとなると、その解決には莫大な費用と多くの時間がかかる。開拓者として切り開く道は長く険しい。
「そこでは『大きなインパクト』と『持続性』の二つが重要です。まずは、きちんと『ビジネス化』し、事業の影響力を大きくする。そして、その事業を継承し『持続可能なアプローチ』をしていくことです」
1次産業の一つの課題は、その魅力が十分に伝わっていないことが挙げられる。十分な利益を生み、もうかっている人もいるのに、人が集まってこなければ、その産業は廃れてしまう。
――イノベーションは次の世代がやりたがる仕事をつくること。
「最新技術に触れられる、もうかる、かっこいいなどのモチベーションが、事業を盛り上げ、未来につながっていきます。そのためには、まず社員や顧客など、ウミトロンに関わる全ての人たちを輝かせていきたいですね」
また「競合が出てくるような事業にしていきたい」と語るのは、競合がいない=社会にインパクトを与えられないという理由からだ。
賛同者が多いほど、社会課題に対する影響は大きくなり、より良い技術や解決策が生まれる。それをかなえるために経営者としてすべきことは明確だった。
「ウミトロンのCEOとしての使命は、人が集まる魅力的な事業をつくり上げること。そして次の世代に引き継いでいくこと。そうすることで日本の課題、そして地球規模の課題へ挑戦していけるのだと思います」
道なき道を進み続ける理由
革新と進化の精神、そして次世代のリーダーシップ。藤原氏の持つビジョンは、先駆者としてプレミアムSUVをリードする「レンジローバー」の哲学と重なる。
クラフトマンシップと最新テクノロジーの融合、英国王室にも愛される品格、そして進化を続けるスタイルが、時代のリーダーたちに支持されてきた理由だ。
「レンジローバーはラグジュアリーなのに、決して主張し過ぎることがなく、内側には強靱なオフロード性能を秘めている。まさに道なき道を進む、パイオニアという印象があります」
そして、その走り心地を「水の上を走っていくようなスムーズな走り」と表現した。普段、空港から養殖場まで、山道や海辺を2、3時間運転するという仕事柄、安定性や高いオフロード性能への共感度も高かった。
「今回運転したのはPHEV(プラグインハイブリッド車)だったのですが、静音性と相反する力強い走り、そして大きめのボディにもかかわらず非常に取り回しが良いことに驚きました」
――それでもなぜ、人類は挑戦し続けるのか
藤原氏が宇宙に興味を抱いたきっかけは、4歳の頃に見たスペースシャトル「チャレンジャー号」だった。子どもながらに衝撃的な映像が胸に刻まれ、それ以降ずっと、この疑問を抱いていたという。
「ようやく最近、その答えが見つかった気がします」
それは「その先に進化があり、未来がある」ということだ。
「現在、地球上で最大の動物種として君臨するシロナガスクジラは、海で生まれ、苦労して陸に上がって肺呼吸を手に入れたのに、また海へ戻る。そこには生き抜くための挑戦があって、その挑戦があったからこそ進化を遂げて、今につなぐことができた。私たち人類も、挑戦し、進化し続けることが、未来を手に入れるために必要なのかもしれません」
地球課題に挑む次世代リーダーと「レンジローバー」。それぞれ業界のパイオニアでありながら、常に進化を求め、道なき道を進み続ける理由は、そこにありそうだ。
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レンジローバー 公式サイト