少子高齢化が進む日本では、15歳以上の労働力人口も減少の一途をたどっている。女性や65歳以上の就業者によって1990年代後半と同程度の労働力を何とか維持しているが、地域差が激しく、地方の人手不足は深刻さを増している。そんな中「外国人材の登用」にかじを切る企業も少なくない。
厚生労働省が発表した「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(2023年10月末)」によると、日本で働く外国人労働者数は200万人を超えた。外国人労働者の割合を産業別に見ると(図1)、最も高いのは、全体の27.0%を占める55万2399人が就労している製造業だ。続くサービス業は15.7%、卸売・小売業が12.9%。いずれも働き手不足に悩む産業だ。
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国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口(23年推計)」によると、日本の人口は70年までに約3割減少し、8700万人になるという。今後日本人の働き手がさらに減れば、外国人材の存在感はより強まるだろう。
円安や賃金、制度の課題で
「日本離れ」リスクが加速
日本企業が外国人材との協働を実現するには、彼らを受け入れるための態勢づくりが必須。しかし、すでに外国人材を受け入れている企業のうち、適切な待遇を提供し、十分なサポートをしている例はごく一部。特に、外国人材が日本で技術を身に付ける名目で実施している「技能実習制度」には多くの課題が指摘されている。悪質な送り出し機関に関わった実習生が多額の借金を負っていたり、日本で劣悪な環境での就労を強いられたりするケースも珍しくない。
日本政府や企業の外国人材対応の遅れにより、働く国としての日本の魅力が失われつつある。出入国在留管理庁の発表(24年10月)によると、24年上半期に新規入国したベトナムの技能実習生は、前年同期に比べて約2割減少した。ベトナムは日本の技能実習制度における最大の送り出し国。しかし、技能実習制度への悪評や、近年の円安傾向が重なり、日本よりも賃金の高い国に人材が流れ、実習生が減少しているという。
こうした課題を解消するため、政府は技能実習制度に代わる「育成就労制度」を創設、27年度の施行を目指しているものの、運用に関する詳細は明かされていない。ただ、この新制度が日本の労働市場に大きなインパクトを与える可能性は高い。日本が“外国人材に選ばれる国”になれるか否か、時代の転換期を迎えている。