メールによるコミュニケーションに煩わしさを感じているビジネスパーソンは少なくない。しかし、ソーシャルメディアで代替できるかというと、公私の使い分けやセキュリティなど多くの課題がある。こうした中で注目されているのがビジネスチャットである。ダイヤモンド・オンラインでの連載が人気だった高城幸司氏と、テンダの中村繁貴氏がコミュニケーションツールの“次の一手”について語り合った。

コミュニケーションツールの
大きな転換期

セレブレイン
代表取締役社長
高城幸司氏

1964年生まれ。同志社大学卒業後、リクルート入社。2005年に人事戦略コンサルティング会社「セレブレイン」を創業。企業の人事評価制度の構築・人材育成・人材紹介などの事業を展開している。職場での“リアルな悩み”に答える「イマドキ職場のギャップ解消法」をダイヤモンド・オンラインで連載。

高城 現在、コミュニケーションの形が変化しつつあります。ひと昔前は電話やファクスが主流でしたが、1990年代半ばからのインターネットの普及を受けてメールが当たり前になりました。そして今、ソーシャルメディアをはじめ、メールに代わるコミュニケーションツールが大きく成長しています。

中村 日本人のコミュニケーションにおいて、特に大きな影響を及ぼしているのがLINEでしょう。加えて、FacebookやTwitterの存在感も大きい。ただ、これらはビジネスユースに適しているとはいえません。

高城 同感です。例えば、Facebookではゴルフの話しか書かない部長さんがいたり、ソーシャルメディアをプロモーションツールと割り切って、宣伝の場として活用している経営者がいたり。人によって用途はさまざまです。個々人のソーシャルメディア空間には、それぞれ異なる作法があるので、そこを間違えると大変なことになる。それは一種ドレスコードのようなもの。披露宴と忘年会では、当然、着る服を替えなければいけません。

中村 ドレスコードを間違えて、大事な取引先の信用をなくした営業マンもいるかもしれませんね。となると、ビジネスのコミュニケーションはやはりメールで、ということになりそうですが、メールにもいろいろな課題を感じます。リスクヘッジというか、アリバイづくりのために、やたらCCの送り先が増えてしまい、結果として一人ひとりが大量のメールを受け取ることになった。これでは、大事なメールが埋もれてしまいます。

高城 CCやBCCは便利な機能ではありますが、結果としてコミュニケーションを重いものにしている面があります。また、「ごぶさたしております」とか「いつもお世話になっています」などの決まり文句も、メールの負担感につながっています。本当に言いたいことは1行なのに、全部で10行書かなければいけない。もっと軽いコミュニケーションツールが欲しいと感じているビジネスパーソンは多いと思います。

テンダ
専務取締役
中村繁貴氏

1976年生まれ。東京国際大学人間社会学部卒業。心理学、高齢者福祉学を専攻。2000年テンダ入社。技術者としてキャリアを積んだ後、プロジェクトマネジメント、システムコンサルタントとしての評価が高まる。現在はITスキルを生かした経営コンサルタントとして活躍し、新規事業、サービス企画を展開している。11年に常務取締役就任。16年より現職。

中村 その課題意識は顕在化しつつあります。手紙やファクスからメールに移行したときと同じくらい、大きな変化が起き始めているのではないか。そう感じています。

高城 メールに限らず、今は変化が求められる時期です。例えば、働き方の見直しは大きな政策テーマの一つになっています。子育てや介護などのために在宅勤務や時短勤務を選ぶ人が、人事的に不利な評価を受けるような状態は解消する必要があるでしょう。実際、在宅勤務の優秀な従業員が、フルタイムで働く人以上に大きな価値を生み出すことだってありますからね。

中村 多々あると思います。価値が生まれた場所が職場だったか自宅だったか、その違いに意味はなく、いいものはいい。同じように、それが素晴らしいアイデアであれば、発案者が新入社員であろうがベテランであろうが、どうでもいいことでしょう。しかし、せっかくのアイデアが組織の中で埋もれてしまうケースも多い。もしもそのアイデアが意思決定者に届いていれば、何らかのアクションにつながっていたかもしれません。価値を価値として認識するためには、適切な情報共有環境が必要です。