この10月1日、スポーツ庁が創設されて1年を迎えた。

 スポーツ庁は文科省の外局として設置された行政機関。創設の狙いはスポーツ行政の一元化だ。これまでスポーツに関する行政は複数の省庁に分かれていた。学校体育や競技の振興・強化などは文科省、競技場など施設の整備は国交省、健康づくりや障害者スポーツ振興は厚労省、国際スポーツ交流は外務省といったように。スポーツ庁をつくり、これらを一元化できれば、「縦割り」の構造は解消され、スポーツ関連の施策はより効率的に行われるというわけだ。

 もちろん、この時期にスポーツ庁が生まれたのは、2020年に東京五輪が行われるからでもある。ホスト国としては、大会を成功させるだけでなく、競技でも過去最高の成績を収めたいという思いがある(目指しているのは金メダル獲得数世界3位)。それにはスポーツ専門の行政機関が主導して強化に当たることが必要不可欠ということなのだろう。

 とはいえ、創設されて間がないせいか、その効果はまだ見えていない。ただ、10月3日、初代長官の鈴木大地氏(ソウル五輪競泳・100m背泳ぎの金メダリスト、現順天堂大学教授)が行った会見で発表した取り組みのなかに、興味深いものがあった。

鈴木大地スポーツ庁初代長官
肝いりの「アスリート発掘支援」

「競技力強化のための今後の支援方針“鈴木プラン”」と題されたもので、6つの取り組みが発表されたが、そのなかの「アスリート発掘支援」だ。高校球児のなかから五輪競技の人材を発掘しようというのである。

 その内容と主旨は次のようなものだ。

 数ある競技のなかでも野球の人気は高く、運動能力に秀でた少年が進む傾向があるうえ、競技人口も多い。甲子園を目指す高校の硬式野球部員は約17万人もいる。だが、そのうち10万人以上は部内の競争に敗れ、試合に出ることなく競技を終える。また、試合で活躍したとしても、その先のプロや大学、社会人で競技を続ける者はごくわずか。大多数が悔いを残して競技から引退してしまう。