ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭

善意で人は救えるか?
「タイガーマスク運動」本当の効果を検証する

竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]
【第36回】 2011年1月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 年初から大きな話題になった「タイガーマスク運動」。今回は、この「事件」を総括する。

 マスメディアで大きく取り上げられたのでご存じだと思うが、簡単にこの現象をまとめておこう。まず、昨年の12月24日夜から25日早朝にかけて、群馬県の児童養護施設にタイガーマスクの本名「伊達直人」を名乗る人物から、10個のランドセルが贈られる。これが報道されると、全国各地で「伊達直人」が出現。数多くの児童養護施設に、ランドセル、米、サッカーボール、文房具、現金、図書館などさまざまなプレゼントが贈られた。東京都清瀬市の施設には、金の延べ棒まで届けられた。これらのプレゼントは全国で1000件を超えたという。

 降って湧いたような寄付ブームではあるが、予兆はあった。昨年10月、「タイガーマスク」の完全復刻版が増刷となり、子ども時代に親しんだオヤジ世代の間でちょとした話題になっていた。大人買いして読み直した人も多いだろう。その中で、原作者の梶原一騎氏自身が「孤児院」出身であることから、「タイガーマスクと児童養護施設支援を結びつけた活動ができるとおもしろいよね」という会話が、社会貢献に関心のある人たちの間で交わされていた。それが現実になったのだ。

 だから最初にランドセルをプレゼントした「初代?」タイガーマスクは、絶対にタイガーマスク復刻版を読んでインスパイアされたのだと、筆者の仲間内では確定されている。

「善意はうれしいが…」
施設側のホンネ

 ところで、今回のタイガーマスク運動、単に「いい話」だけでは終わっていない。実は、児童養護施設では新入学児童のランドセル購入には予算が出ていることもあり、他にも施設側からすれば「もらっても、あまりうれしくない。役に立たない」プレゼントもあり、「善意はうれしいが、施設や子どもたちの事情を理解してプレゼントしてほしい」旨のアナウンスが施設側からも発信されている。

 これに対して、「善意の人を傷つける発言」「あつかましい発言だ」という批判も出ている。つまり、寄付のあり方を巡って議論が巻き起こっている。これは、日本の寄付文化を発展させるためには、非常に良いことだと思う。議論がなければ、正しい理解も、多くの人の関心も得られないからだ。

 児童養護施設の子どもたち支援を行っているNPO法人「ブリッジフォースマイル」の理事長・林恵子氏は、「今回のタイガーマスク現象のおかげで実際に寄付が増えました。また、ボランティア説明会への参加申し込みも増えています。関心を持つ人が確実に増えています」と語る。そのうえで、「一般の人たちが考えている児童養護施設のイメージと実際の現場は違う。そのことを理解した上で支援してほしい」と言う。

 たとえば、施設にいる子どもたちのほとんどは「親がいない子ども」ではない。大半が虐待や育児放棄によって保護された子どもたちだ。このことは、タイガーマスク現象の報道によって、ようやく社会に理解され始めた事情だろう。ちなみに、保護される子どもたちの在所期間は平均4.6年。つまり、ある程度施設で保護された後、親元に戻される子どもたちが多いということだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]

マーケティング・コンサルタントとしてクルマ、家電、パソコン、飲料、食品などあらゆる業種のトップ企業にて商品開発、業態開発を行なう。近年は領域を社会貢献に特化し、CSRコンサルタント、社会貢献ビジネスの開発プランナーとして活動。多くの企業にてCSR戦略、NGOのコミュニケーション戦略の構築を行なう。「日本を社会貢献でメシが食える社会にする」ことがミッションに、全国各地で講演活動を行なう。ソーシャル系ビジネスコンテストや各種財団の助成金などの審査員多数。また、「日本の女子力が世界を変える」をテーマに、世界の女性、少女をエンパワーメントするための団体「ガール・パワー(一般社団法人日本女子力推進事業団)」を、夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美氏、日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカ氏らと共に設立。著書に『社会貢献でメシを食う。』『ジャパニーズスピリッツの開国力』(いずれもダイヤモンド社)がある。

株式会社ソーシャルプランニング
☆竹井氏ブログ 社会貢献でメシを食う〝REAL(リアル)〟
☆Twitterアカウント:takeiyoshiaki


社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭

CSRやコーズマーケティングをはじめ、「社会貢献」というテーマがポピュラーとなったいま、「社会貢献のセカンドウェーブ」が来ている。新たなサービスやプロジェクトのみならず、新たな主役たちも登場し始めた。当連載では話題の事例を取り上げながら、社会貢献的視点で世の中のトレンドを紹介していく。
*当連載は、人気連載『社会貢献を買う人たち』のリニューアル版として、2014年1月より連載名を変更しました。

「社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭」

⇒バックナンバー一覧