今「がん」に関する情報があふれています。芸能人でもがんを公表する人がいるため、ある意味、よく聞く病気になりました。しかし、情報があふれているゆえに、本当に正しい情報はなんなのか……迷う人が多いのも事実です。
そこで、がん患者さんに日々接している現役の国立病院の内野三菜子医師が、がんの主治医に聞きにくいようなことや、知っておいたほうがいいことなどを解説した本『身近な人ががんになったときに役立つ知識76』を発売。この連載では、その本の中から気になるところを紹介していきます。
がんになったら、がん専門病院?
大学病院?どこを選ぶのが正解?
Q 治療するなら、どの病院がいいの?
「がんの研究を専門にしている病院のほうがいい!」
「大きな病院じゃないと、きちんとした治療は受けられないのでは?」
「有名な先生のいる病院がいい!」
がんと診断されて、どこの病院で治療をするかを考えたとき、このように思う患者さんは、まだまだ多いのではないでしょうか。
確かに、以前は地域や病院によって、がんの治療法にはかなりの格差がありました。しかし、がん治療の体制はこの10年で驚くほど整備されています。きっかけは、2006年6月に成立した「がん対策基本法」です。
がん対策基本法は、「がんの予防と早期発見」「がん医療の均てん化(全国どこでも同じ内容の専門的な医療が受けられること)」「がん研究」の3つを柱に、がん対策を推進することを目的としたもので、この法律ができたことでがんの治療体制は様変わりしました。なかでも大きく進展したのが「がん医療の均てん化」です。
がんの専門的な治療ができる「がん診療連携拠点病院」は、全国47都道府県で427ヵ所まで増えました(2016年4月1日現在)。がん診療連携拠点病院は、「都道府県」「地域」「特定領域」の3種類があり、身近にあるのが「地域がん診療連携拠点病院」です。
この「地域がん診療連携拠点病院」が設定される目安としては、およそ家から片道30分程度で受診が出来る距離にある医療機関で、2次保健医療圏と呼ばれる、人口や医療の必要性に応じて分けられたエリアに設けられ患者さんにとっても通いやすい病院です。
このがん診療連携拠点病院が、地域ごとに設けられたおかげで、現在は日本全国どこでも、がんの「標準治療」、または「ガイドラインに沿った治療」が受けられるようになっているのです。