1月13日付けの本コラム(日本のデフレは人口減少が原因なのか 人口増減と「物価」は実は関係がない)において、次の趣旨のことを書いた。
「デフレの正体」も、著者が言うように「耐久消費財価格の下落の正体」としておけば、正しい分析であっただろう。
デフレという言葉の誤用は
二重の意味でマズイ
マスコミを含む多くの人が、「耐久消費財価格の下落」を“デフレ”と勘違いしているのは何とも皮肉な話だ。言葉の誤用だけで済めば、そう目くじらをたてることもないが、この誤用は二重の意味でまずい。
一つは、金融政策の主要な手段であるベースマネーの調整で対処できる「デフレ」が、人口要因で規定されて、金融政策で対処できないモノとの印象を広く一般に振りまくことだ。二つ目は、個別価格へも政策関与したいお上の権限拡大・官僚主義を許すことになることだ。
これは、本来やらなければいけない仕事をさぼって、別の余計な仕事を作り出すという意味で二重に悪い。そもそも金融政策はマクロの物価へ働きかける政策であって、個別の価格決定に関与しないのがメリットである。一般の人が個別価格に関心があるのは理解できるが、個別の価格に政策として関与すると、個別のビジネスに大きな影響があるので、政策論としては個別価格への関与はしてはいけない。
ところが、一番目の懸念はすでに顕在化している。2月7日の日本外国特派員協会での講演で、白川方明日銀総裁は、デフレ人口原因論に便乗し、「潤沢な資金供給は重要だが、これだけでデフレの問題が解決するわけではない」と述べた。