中国は「世界の工場」から「世紀の市場」へと急速に変わりつつある。この事実はだんだん日本でも広く認識されるようになってきている。「中国の金持ちは若い」。これも日本で次第に知られるようになっていると思う。

 だから、中国で流行っている「80后」「90后」といった流行語が日本のメディアを賑わせている。前者は1980年以降生まれの若者を、後者は1990年以降生まれの若者を指す。本来、日本語の表示では「80後」「90後」とすべきだが、どうしたわけか日本のメディアでは、「80后」「90后」を使用するのが好きなようだ。

 中国語の簡体字表現をそのまま踏襲しているのだろうと思うが、「后」という文字のもつ響きやイメージもこうした傾向を助長しているのでは、とひそかに考えている。

 中国の旺盛な消費意欲をもつ「80后」に、日本企業も熱いまなざしを向けている。彼らの消費傾向に対する関心度も高い。確かに中国のビジネス現場を回ってみると、40代半ばまでの消費者が多勢をなし、50代以降になると消費力も消費欲も急速に低下してくる傾向がある。

 やはり経済力の問題だ。中国の多くの家庭を見ると、20代、30代の子供の収入が50代、60代の親の収入を大きく上回っている。こうした現象に気付き、中国に進出した外資系企業(日本企業も含む)の中には、50代以降の消費者に対しては関心を持たなくてもいいと言いきるところもある。こうした発言を日本のビジネスシンポジウムで何度か聞いたことがある。

 ところが意外なことに、最近シルバービジネスに関する問い合わせが中国から来る。高齢者向けの商品開発に関心をもっているので、日本のシルバービジネス市場を調査したいといったものだ。これまで日本企業にあまり関心をもってもらえなかった中国の高齢者消費者層が、中国では最近静かに注目の存在になりつつある。