運用率2%なら「年金」が
断然おトクに見えるはずが…
年度末が近づいて、3月いっぱいで定年退職する人の相談が相次いだ。多くは、60歳以降の収入ダウンに備えた収支の見直しや生活設計であるが、今年は「退職金の受け取り方法」についての相談もあった。
サラリーマンの退職金の受け取り方法は、「一時金のみ」「一時金+一部を年金」「すべて年金」などいくつかのパターンがあるが、これらのパターンを選択できるかどうかは勤務先により異なる。
「年金」を選択すると、退職金原資が受け取り期間中も引き続き運用されるため、受け取り総額は「一時金」よりも多くなるのが一般的だ。運用率は企業によって異なるが、最近は1~2%程度のようだ。マイナス金利政策の状況下では、銀行の定期預金に比べてはるかに魅力的に映るため、選択の自由があるなら「年金」で受け取りたいと考える人が多い。
たとえば、勤続38年の人が退職金2000万円をすべて一時金で受け取ると、手取り額は2000万円となる。退職金一時金の課税方法は、勤続年数に応じた「退職所得控除」というみなし経費を差し引くことができるうえ、他の所得と分けて税金計算をするので、他の所得に比べて納税者に有利な計算方法といえる。勤続38年だと退職所得控除が2060万円になるため、所得税・住民税はかからず、額面=手取りとなる。
一方、運用率2%の「10年確定年金」を選択すると、60歳から69歳までの年金額は約221万円。10年間の受け取り総額は約2210万円なので、単純計算すると、「一時金」よりも「年金」のほうがおトクに見える。大多数の退職者は「60歳で2000万円を一時金で受け取っても、自分で2%の運用はできない。年金受け取りがトク」と判断する。
今のご時世、「自分で2%の運用はできない」と考えるのは正しい。しかし、退職金の「年金受け取り」は雑所得として給与や公的年金と合算して課税されるため、所得税・住民税はもちろんのこと、国民健康保険料や介護保険料もアップする。つまり、必ずしも「年金」がトクとも言い切れないのである。