お勧めは「全額一時金」受け取り、
年金額が増えるほど税・社保の負担も重くなる

 前述の試算は、あくまで一例である。「一時金」と「年金」、どちらを選択するとトクなのかは、企業年金の運用率、年金額、お住まいの自治体の国保・介護保険料率などによってケースバイケースとなる。

 ただ、ひとつ言えることは、1年あたりの年金額が多額になるほど、税金と社会保険料の負担が重くなり、「一時金」のほうが有利になる傾向にあること。この点は覚えておいてほしい。

 特に国民健康保険料と介護保険料は、多くの自治体で毎年のように引き上げられている。将来的にも保険料アップは避けられないだろう。こうした事情を考慮すると、私のお勧めは「一時金」受け取りである。

 一時金でまとまった金額を手にしたときは、注意点がいくつかある。まず、浮かれて大きな出費をしないこと。毎年夫婦で海外旅行に行き、大盤振る舞いをしたり、子どもたちに自分たちの体力以上の住宅資金援助をしたり…と、後先考えずに大出費祭りをする人が少なくない。70歳以降にお金が足りなくならないよう、まずは60歳以降の収支予測を立てることからはじめよう。

 また、多額のお金を手にすると、多くの人が「退職金運用病」にかかる。「何か増えるものに預けないと、せっかくのお金がもったいない」と考えるようだが、マイナス金利政策の状況下で安全に増える金融商品などない。

「自分が知らないだけで、どこかにあるはず」と、金融機関(多くは銀行)に出向き、勧められた商品を一時払いで購入する人が後を絶たない。今なら「一時払いの外貨建て年金(もしくは終身保険)」を勧められるだろう。外貨建て商品は、日本人個人の資産運用に決して有利なわけではない。銀行や保険会社が「円建て」のものを売っても儲からないから、「外貨建て」を売っているという「売り手の事情」を知っておいてほしい。

 今回の私の試算では、2000万円を一時金受け取りして、その後運用をまったくしなかったとしても「全額一時金受け取り」が最も有利になったことを、頭の片隅に置いておいていただければと思う。

(ファイナンシャルプランナー 深田晶恵)