人口や世帯数の減少など、構造的に厳しい経営環境にある住宅業界は、2008年のリーマンショックで危機的状況となった。積水ハウスは三つの“構造改革”で国内住宅事業をテコ入れした。

「厳しい環境でも、当社は(国内の)住宅事業という基礎があってこそ、国際事業などの多角化が成り立つ」。和田勇会長兼CEOは、全社売上高の半分を占める国内住宅事業の重要性をこう強調する。

 長期的に見れば、人口や世帯数の減少など住宅業界の経営環境は、構造的に厳しい状況にある。

 新築住宅の新設住宅着工戸数は、1996年以降伸び悩み、2008年9月にはリーマンショックが発生、09年は42年ぶりに100万戸を割り込んだ。積水ハウスの業績もこれに連動し、08年度から2年連続で悪化した(図(1))。

 特に09年度は不動産市況の悪化で、不動産販売事業で679億円の不動産評価損を計上。上場以来初の営業赤字に転落した。

 その年、肝心の国内住宅事業は、受注高が前年度比8.7%減の6116億円、営業利益率が同0.4ポイント減の8.1%となった。

「会社の持続的な成長には(国内住宅事業の)安定が不可欠だ」(和田会長兼CEO)。受注高はもとより、営業利益率も10%以上という、リーマンショック以前の水準への早期回復が必達目標とされた。

 同社はリーマンショック以降、国内住宅事業を安定させるため、“選択と集中”で構造改革を進めた。その手法は大別して三つ。

 一つ目は、費用構造の改革だ。象徴的なのが、09年3月末に実施した滋賀工場の閉鎖である。

 これにより固定費が約40億円下がり、住宅事業の損益分岐点(棟数ベース)は2万2000棟から1万6000棟に下がった。10年には静岡工場への新製造ラインの導入やほかの工場でのコスト削減などで、固定費はさらに約40億円下がり、損益分岐点が1万3500棟となり、当初から約4割下げた。

 積水ハウスの住宅販売棟数は09年度が約1万9900棟、10年度でも約2万棟にとどまっている。仮に滋賀工場を閉鎖しなければ、出荷棟数が損益分岐点を下回り、09~10年度は営業損失が発生していたはずだ(図(2))。

 二つ目は、高付加価値商品へのシフトだ。販売棟数の大幅な伸びは期待できない。受注高と営業利益を増やすには、高付加価値商品で商品単価を上げるしかない。

 そこで、09年3月に太陽光発電や燃料電池を備えた環境配慮型住宅「グリーンファースト」を新ブランドとして立ち上げ、拡販する戦略に出た。環境ブームに加え、09年1月から始まった国や自治体による太陽光発電の補助金制度や、10年からの住宅エコポイント制度などの住宅取得支援策という「追い風」に乗るのが狙いだ。