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『大学図鑑!』が大学選びの疑問にお答えします!
【第6回】 2017年4月20日
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オバタカズユキ[監修]

キャンパス見学は大学選びの決め手になりますか?
行くなら、どんな場所や時間帯が最適でしょう?

初刊行から19年を数えるロングセラー『大学図鑑!』の2018年版発売を記念し、監修者オバタカズユキさんがみなさんから寄せられた“大学選び”の悩みについて、独断と偏見で答えちゃいます。今回は、社会人として大学に再び勉強に行きたいという方から、大学選びの際に実際にキャンパスや研究室を訪れるべきかというご質問です!(なお、本連載での回答は、就職や夢の実現を保証するものではなく、一意見として参考にしてください。受験生ご本人、親御さん、ご親戚からのご質問をお待ちしております!)

Q. 私は、一度大学・大学院を卒業しており、現在は社会人として別の大学で学ぶことを検討しているところです。事前に「行きたい」と考えていた大学があるのですが、隣県で魅力的な大学を見つけ、迷いが生じているところです。現役時代は、オープンキャンパスに行ったことはありません。
  大学に実際に行ってみることや、雰囲気を味わうなどのことは、意味がある気はするのですが、大学選びの決め手にまでなるものでしょうか? 今、大学選びについて、周囲の人から「オープンキャンパスなどに行ったり、研究室訪問をできればすべきだ」と言われたのですが、それだけで大学選びの決め手が得られるものでしょうか?

キャンパスや研究室は実際に訪れてみるべき?

A.  ご質問ありがとうございます。大学選びの段階でのキャンパス見学は極めて重要です。
 キャンパス見学もしないでその大学に入ることは、会社説明会やOB・OG訪問に行かないで就・転職をするようなものです。これから長い期間自分が生活する場所であるという意味では、部屋の下見もしないで引っ越し先を決めてしまうのとも似ています。

 『大学図鑑!』は全国の主要な大学のキャンパスに、取材スタッフが直接足を運び、その場に身をおいてこそ得られるものを五感でつかみとり、また、そこを行き交う在学生に声をかけて「生の声」を聞かせてもらう、という原始的な方法で「情報」を集めています。もちろん、各大学が公表している学習カリキュラムや研究内容、各種データなどもチェックしておりますが、重視しているのはあくまでも現場での体感です。

 読者の方々には、『大学図鑑!』で気になる大学のあらましを把握し、あとは実際に大学キャンパスへ足を運んで自分の目で確かめてください、と毎年お願いしています。同じ大学キャンパスを見ても、見る人によってその感じ方や拾う「情報」は異なるからです。『大学図鑑!』はそのためのざっくりとした「地図」くらいに考えてほしいんです。

社会人でも高校生でも浪人生でも、百聞は一見にしかず

 質問者の場合、すでに大学と大学院を卒業なさっています。そして、いったん社会に出てから、また大学での学びを求めていらっしゃいます。
 
 その場合、高校生や高卒生など一般的な受験生よりも、大学に行く目的がすでにはっきりしているはずです。資格取得を目指していらっしゃるのか、異業種への転身の基礎固めをなさろうとしているか、具体的には分かりませんが、未知の分野についてそれに通じた専門家からきちんとした教育を受けたいため、大学に入り直したいわけですよね。

 でしたら、まずやるべきは、すでに周囲の方がアドバイスされている「研究室訪問」の段取りをつけることではないでしょうか。入りたい研究室、教えてもらいたい教授がはっきりしていれば、大学当局を通してでも、その研究室に直接当たるのでも、どちらでもいいので、ダイレクトに聞くに限ります。

 ネットほかの二次情報では見えてこない、研究や学びの実際を、教授に教えてもらうのです。受けてくれるかどうかはその教授によりけり、質問者の依頼が通じるかどうかですが、真摯に頼めば、30分くらいの面談時間をとってくれる場合のほうが多いと思います。もしその教授が忙しくて捕まらなければ、助手的な立場の方でもいいですし、その研究室の院生や学部生と会わせてもらうのでもいいでしょう。

 そして、研究室にお邪魔してその様子をしかと観察し、教授や院生や学部生からは、毎日どんな研究をどんなふうに行っているのか、自分が望んでいる学びはこの研究室で教えてもらえるものなのか、相手の時間の許す限りめいっぱい質問してみるのです。学んだあとのことが気になるのなら、学部や院を出た後、みなさんどんな進路をとられているか、遠慮なく聞いてみればいいでしょう。

 すでに社会で働いた経験がおありなので十分ご承知のことと思いますが、百聞は一見にしかず、です。公になっている論文、資料、データをいくら読みこんでも、生の相手から得られる情報の深さには及びません。もちろん、入手できる論文、資料、データを一通りチェックしてから会うことが礼儀ですが、生身の人間は表情や仕草など言葉以外のノンバーバルコミュニケーションでもいろいろなことを伝えてくれます。

 質問者の鋭い問いに、相手がどんな顔でそれに応えるか。直接言葉にしなくても、「察してほしい」何かのサインを出していないか。そもそもその人のもとで学んでみたいと感じられる教授か、あるいは一緒に学びたいと思える学生たちか。それらは現場に行かねば分かりません。

 私のようなライター業ですと、どんなにネットが発達し、メール取材やスカイプ取材が可能になっても、やはり時間と費用が許す限り、相手のもとに出かけ、現場取材を敢行することが基本です。ネットで二次情報をちゃちゃっと集めて気の利いたタイトルでもつければ、そこそこのページビューのとれる記事が作れないこともありません。

 でも、それは基本的に「手抜き」だと思っています。そう思うのは、現場取材で得られる「質」の豊潤さを知っているからです。フェイス・トゥ・フェイスだからこそ伝わる「情報」だけでなく、ときに人は「ここだけの話」もしてくれます。私見や、非公式的な内部事情なども、こそっと教えてくれる場合があります。

 だから、どれだけウェブが発達しても、多くの職業で直接顔と顔を合わせる「打ち合わせ」は今でもやっているし、意見交換の意味での「接待」も続けられているわけですよね。その重要性は普遍的なものですから、とにかく行きたい大学や気になる大学の研究室に、なるべく早く出かけてください。

 以上は、社会人である質問者に向けて書きましたが、これが高校在学中や浪人中の受験生の場合でも基本的には同じです。

キャンパス見学に行くべき場所や時間帯は…?

 学びたい学問があるのなら、行ってみたい大学に連絡を取って、「専門の先生のお話を伺いたいので、該当する研究室をご紹介ください」と頼んでみましょう。

 そうした学生が大量に押し寄せたら対応しきれないので、「それはオープンキャンパスのときに質問してください」と返されてしまうかもしれません。であれば、オープンキャンパスに出かけ、そこで気になる研究室の関係者を探してください。そして、自分を知ってもらい、連絡先を手に入れてください。オープンキャンパス後にあらためて個別見学を受けてもらえるよう協力してもらうためです。

 なぜ、そんな手間のかかることをするのか。オープンキャンパスだけでは、「足りない」からです。もちろん、行かないより行ったほうが何倍もいいのですけれども、そこは大学の「宣伝」の場です。外交的で話がおもしろく、大学の「顔」になるような選りすぐりの教職員や学生たちを現場に立たせます。そして、大学のプラスの部分を強調して話をしてもらいます。どんな大学にもマイナスの部分だってあるわけですが、そこはあまり見せないようにします。

 であるから、より日常的な大学の姿を見てもらいたいし、より非公式に教員や学生と対面し、「ここだけの話」を引き出してもらいたいのです。そんなこと私にできるだろうか、と思う人も多いでしょうが、案ずるより産むが易し。彼らにしたって、そこまで「自分たちに」関心を強く持ってくれる受験生とは滅多に出会えないし、自分に関心を寄せられれば誰だって嬉しいものですから、意外といろいろ話してくれるはずです。それが「後輩候補」であったら尚更です。年下特権で、どんどん甘えてみればいいのです。

 なんのコネクションもなく、キャンパス見学をする場合、「自分が勝手に中に入っていいのだろうか」不安になる人も多いでしょう。それは基本的に心配無用です。元来、大学キャンパスは公に開かれているべきところなのです。

 安全上の理由などで、女子大や一部の大学は、「関係者以外立ち入り禁止」を厳しくしていることもありますが、誰が出入りしようが何も気にしません、というキャンパスだってたくさんあります。門の近くに守衛室がたいていあるので、それでも気になる人は「受験生なのですが、大学の下見に来ました」と断ればいいと思います。念のため、住所と名前くらい書かされるかもしれませんが、たいていその場でOKしてくれます。ついでにそこで、キャンパスマップをもらっちゃいましょう。

 一般受験生で大学の空気を知りたい人は、まず、学食やカフェテリアにGOです。外部の人でも注文できますから、そこで食事をとりながら、まわりの学生を観察してみましょう。キャンパスによって、感じられる学生の雰囲気は意外と違うものです。昼時は混雑しているので、午前か午後の外した時間がいいと思います。学食やカフェテリアでリラックスしている学生たちの様子は、彼らの「素顔」です。自分との相性を確かめてみてください。

 授業に潜り込むことは建前上禁止ですが、大教室なら「いいよ」と言ってくれる教授も少なくないでしょう。どんな雰囲気でどんな講義が行われているのか、体験してみることには意義があります。

 就職が気になる人は、キャリアセンターにも行ってみるといいと思います。そこは原則的に誰でも出入り自由です。ただ、置かれてある資料の閲覧や端末の操作には、職員の許可をとってください。就職状況について聞きたいことは、センターの職員に自分の身分を明かしたうえで遠慮なく聞いてみればいいでしょう。これも、そこまでやる受験生はめずらしいので、職員が忙しくなければ優しく対応してくれると思います。

 このほか、図書館は学生証や会員カードなどがないと入館できないところが増えています。が、ここでも受験生であることを明かして、図書館職員に見学を頼んでみる価値はあります。時間制限つき、立ち入る場所の制限つきで、許可を出してくれるケースも少なくないはずです。大学図書館は、その大学の「知の厚み」を体感するのにぴったりな場所です。

 そんなこんなのキャンパス見学。できれば、土日祝日や長期休暇期間ではなく、平日の日中に行ってください。理由は、もうお察しのように、そこの教職員の普段の姿を見ておきたいからです。希望している大学が遠方にある場合はちょっと難しいですけれども、キャンパス見学のために1日や2日ぐらい、会社や学校を休んだっていいと私は個人的に思います。浪人生なら、勉強漬けの毎日にアクセントをつけるイメージで、目指す大学を観に行きましょう。

 現場で五感を働かせ、相手をしてもらえたなら教職員から聞きたいことも存分に聞いてみると、自分の内に立ち上がってくる志望大学像は、ネットで仕入れた知識によるイメージとはだいぶ違うはずです。そのリアリティこそが、大学選びの最重要情報だし、受験に向けたモチベーションにもなるものだと思います。

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オバタカズユキ [監修]

フリーライター、フリー編集者。 著書に『何のために働くか』(幻冬舎文庫)、『だから女は大変だ』(文藝春秋)、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)ほか。企画、編集、構成で携わった本は『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)、『国のために死ねるか』(文春新書)、『クラッシャー上司』(PHP新書)など。


『大学図鑑!』が大学選びの疑問にお答えします!

楽しいキャンパスライフ、生活費や学費などの予算、就職への有利さ・・・・・・など色々気になって、志望校を探したり受験後の合格校選択には迷いがつきもの。そんなとき、『大学図鑑!』監修者として約20年間にわたって各大学や学生さんをつぶさに観察してきたオバタカズユキさんならどう考えるのか? 本連載では、みなさんから寄せられた大学選びの悩みにお答えしていきます。各大学の詳細については是非『大学図鑑!2018』をご覧ください!

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