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『大学図鑑!』が大学選びの疑問にお答えします!
【第5回】 2017年4月13日
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オバタカズユキ[監修]

Fランク大学と専門学校、どちらを選ぶべきか?
親としては「大卒」レベルの賃金を得てほしいけど…

初刊行から19年を数えるロングセラー『大学図鑑!』の2018年版発売を記念し、監修者オバタカズユキさんがみなさんから寄せられた“大学選び”の悩みについて、独断と偏見で答えちゃいます。今回は、推薦かAOで安易にFランク大学に行ってしまいそうな息子を心配されるお父さんへの回答です!(なお、本連載での回答は、就職や夢の実現を保証するものではなく、一意見として参考にしてください。受験生ご本人、親御さん、ご親戚からのご質問をお待ちしております!)

Q 今年は息子が進学時期ということで、『大学図鑑!2018』を自分も参考に読ませていただきました。息子の通う高校は地方の下位校で、複数の大学から推薦枠とAO入試の案内がきているものの、それらは『大学図鑑!』だと最下位グループにあたる「関東私大Eグループ」(編集部注:本書独自の区分で、関東私大をA~Eグループに分けています。ちなみにEグループは大東文化、東海、亜細亜、帝京、国士舘、拓殖、東京経済、和光、立正、関東学院、桜美林)のいくつかと、ほかは同書に掲載されていないそれ以下のレベル(Fランク?)と思われます。
 しかも息子の成績は、ビリから数えたほうが早いレベルです。2年の成績が推薦やAOで先方にいくので、頑張って上げるようにと2年のはじめに三者面談で言われたし、自分も口を酸っぱくして言い続けたのですが、この始末。
 つい先日、友だちのつきあいで車系専門学校のオープンキャンパスに行った息子が、ふだんは車の話などしないのに、その気になって帰ってきました。たしかに、その専門学校は面白いカリキュラムのある有名校ではあるものの、息子の反応には内心仰天しました。
 私としては『大学図鑑!』のせめてEグループまでの大学を目指してもらいたいなあ、中小企業でも面白い会社がたくさんあるのは知っているので、賃金を「大卒」基準でもらってほしいと思うのですが、このままだと“Fランク”行きは確実そうです。なぜなら、高校の生徒はほとんど推薦枠かAOで入学していて、受験する子はごくわずかしかいないそうなのです。友だちに流されやすいうえに文系なので、せめて少しでもマシなところに進んでもらいたいのですが……。心理学系に唯一興味があるようなのですが、そもそもEはともかくFランクの心理学科で就職口はあるのでしょうか?
 色々とっちらかってしまいましたが、オバタさまのご意見をお聞かせください。よろしくお願いいたします。

せめてEランクの大学に行ってほしい、という親心だが…

A  長文のご質問をありがとうございました。何をのんきにと怒られてしまうかもしれませんが、拝読し、「いいなあ、この父子」と温かい気持ちになりました。

 息子さんの将来が心配でならないお父さま。最初は「ちょっと過干渉かも」と感じたのですが、よくよく読ませてもらうと違う。ご自身が大学受験生の年代だった頃とはかなり変化している昨今の受験事情を、お父さまはきちんと調べて理解されています。推薦やAO入試の合格に必要な条件をちゃんとご存じだし、なにより息子さんの成績や性格傾向、現在の進路に関する気持ちについても把握されています。

 きっと息子さんは、お父さまのことが大好きなのでしょう。でなきゃ、高校3年生あたりの男子が父親に、パッとしない自分の成績をオープンにはしないものです。<友だちに流されやすい>と感じさせるような場面を父親に見せないし、<心理系に唯一興味がある>といったナイーブな内面まで明かそうとはしません。息子さんはお父さまのことを信頼しているので、自分を隠さずにいられるのだと思います。

 そんな父子関係はそう簡単に作れるものじゃありません。おそらく幼少の頃から、父が子に正面からきちんと向き合ってきた。その蓄積の成果だと私は思います。そして、そうやって自分の存在を深いところで肯定されて育ってきたお子さんは、この先、大きな壁にぶつかっても自分を大事にするということを忘れない。そこさえ揺るがなければ、どんな学歴であろうが、どんなに厳しい社会だろうが、人はけっこうたくましく生きていけるものだと私は考えます。

 だから、たしかにお父さまの質問文は少々「とっちらかって」いるかもしれませんが、さほどに慌てなくても、息子さんは大丈夫なように思うのです。<広告、建前、裏取引一切なし!>をキャッチコピーとする『大学図鑑!』を作っている私ですから、きれい事は言っておりません。「いいなあ、この父子」と本当に感じた私の気持ちを、まず受け取ってください。

 そのうえで申し上げます。息子さんは、先日、車系専門学校のオープンキャンパスに行き、特に車好きでもないのに、<その気になって帰って>きて、お父さまを驚かせたのですよね。さらにお父さまは<そこは面白いカリキュラムのる有名校>と書かれています。ならば、進学先の暫定的第一志望はその専門学校でいいのではないでしょうか。

 もちろん、そんな簡単に言ってくれるな、というお気持ちは理解できます。<中小企業でも面白い会社がたくさんあるのは知っているので、賃金を「大卒」基準でもらってほしいと思う>というご意見はごもっともです。知る人ぞ知るいい優良企業が世の中にはいっぱいあるのだから、そこの総合職採用基準(=大卒)をとりあえずクリアしてくれ、との思いは、世間体や見栄などから出てきたものじゃなく、お子さんの将来を本気で考えたからこそです。

「大卒」切符はいつまで有効か?

 ただ、どうでしょう。

 ご承知のように、あらゆる産業構造が大変化中で、しかもその変化の速度は増すばかりです。知る人ぞ知る優良企業でも10年先にどうなっているかは、誰もわかりません。大卒という「資格」を取って、優良企業の入場切符を手に入れても、それが先々の生活保障になるのかどうか、私は疑問です。

 あくまで私見ですが、優良な中小企業で10年後、20年後、30年後も優良でい続けるところは、<賃金を「大卒」基準で>支払うような旧式の雇用スタイルをすでに壊しているのではないでしょうか。私が取材したことのある有望ベンチャー企業のいくつかは、「大卒」も「専門学校卒」も同じ扱いで採用していました。そのぶん、はっきりとした実力主義で、たとえ難関大学を出た社員でも、働きが悪ければ優遇なんてされてませんでした。

 新卒採用の際に「専門学校卒」よりも「大卒」を優遇する会社が多いことは事実だと思います。けれども、入社後、その学歴差を埋めて十分の働きをする社員には、相応のポジションを任せ、相応の報酬を支払う会社はどんどん増えているし、イノベーションを起こしながら生き残っていく可能性の高い優良企業ほど、学歴云々はどうでもいいという傾向も強まっているように見えます。

 そうした中で、働く者にもっとも求められるものは、単純な話ですけれども「やる気」です。学歴や資格などのスペックよりも、職務へのモチベーションやその会社の理念に対する共感性を重視しています。

 だとしたならば、息子さんが専門学校のオープンキャンパスに行って、<その気に>なったというのは、かなりラッキーな話ではないでしょうか。何が息子さんの心を動かしたのかはわかりませんが、進学においても一番重視すべきはモチベーションだと思うのです。私がお父さんの立場だとしたら、その専門学校についてもっと調べてみろ、と息子さんに言います。

 そして、他の専門学校や、一般入試で受けられそうな大学も、なるべくたくさん見学に行かせます。さきほど「暫定的第一志望」と書いたのは、息子さんがもっと多くの進学先の感触を確かめていったら、より<その気に>なるケースがまだまだ出てきそうだからです。

 友だちのつきあいで行った専門学校で、お父さまが<仰天>するような反応を起こした息子さんです。どこでどんなアンテナが働くか、楽しみじゃないですか。ピンときた学校が、たとえ学力的に難しそうな大学であったとしても、モチベーションさえ見つかれば、ガリ勉スイッチが入るかもしれません。逆に、ピンと来たのが、名前を書けば誰でも入れるような専門学校だとしても、入学後に目覚めて、優良企業が「いいね、君のやる気は!」と評価する人材になる可能性だって十分にありえると思います。

「心理学部(科)」の内容を息子さんによく調べさせよう

 お父さまは、<EはともかくFランクの心理学科で就職口はあるのでしょうか?>と質問なさっていますが、この件はシビアに申し上げましょう。もし心理職で正規就職したいのなら、『大学図鑑!』でいえばAグループ(早稲田、慶應、上智、国際基督教、東京理科)以上の大学を出てその大学院を優秀な成績で修めるくらいじゃないと難しいのが現実です。そのくらい心理職の雇用情勢は厳しい。

 また、大学の心理学部(科)では、実験授業が盛んに行われます。知覚や記憶や思考など基本的な心的機能の働きについて、ネズミを使った実験でデータを取り、その統計分析と格闘し続ける。そんな地味でハードな研究が待ち構えています。心理学に興味を示す人の多くは、自分や身近な誰かの心の奥を知りたいといった動機を持っているものですが、そういう面白心理学みたいなことは、基本的に扱いません。そこは要注意です。

 職種は問わないというなら、何学科を出ようが、大切なのはやっぱりモチベーションです。進学した先で、どれだけ生き生きと学んだか、社会で生きていくということに関して気づきを得たか、そのあたりが問われます。

 大学名は、EでもFでも、ぶっちゃけ大きく変わりません。ざっくり申し上げると、MARCH(明治、青学、立教、中央、法政。『大学図鑑!』ではBグループ)より下位の大学名が就職の武器になることはあまりないとお考えになっていいと思います。ただし、やる気や人間性などは卒業大学名に関係なく、評価対象になります。勉強があまりできるほうじゃないのなら、余計に大事なのはそこです。きれい事じゃなく、それが現実です。

 受験システムや進学の現状に詳しくなるほど、「木を見て森を見ず」のような意識になりがちなところがあります。実社会で生きることの厳しさをよくご存じであると思われるお父さまが、「大卒」や細かな「ランク」ごときにこだわられているのは、失礼ながら、そういうことかもしれません。

 しっかりと向き合って育ててきた息子さんの、潜在的な生命力を信じ、高校卒業後の進路については、ちょっと距離を取って、本人任せにしてみたらいかがでしょうか。

 これまでの学校の成績が芳しくなかったのは、「やらされる勉強」にモチベーションを見出せなかったからだと思います。学校見学というかたちで、新しい世界を覗きに行けば行くほど、「勉強って面白いかも!」という発見を意外にたくさん見つけてくる。息子さんはいい意味で、そんなタイプのようにお見受けします。

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    オバタカズユキ [監修]

    フリーライター、フリー編集者。 著書に『何のために働くか』(幻冬舎文庫)、『だから女は大変だ』(文藝春秋)、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)ほか。企画、編集、構成で携わった本は『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)、『国のために死ねるか』(文春新書)、『クラッシャー上司』(PHP新書)など。


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