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何も書かれていない位牌
読経が行われない葬式

 医師からの死亡診断書を添えて死亡届が市役所に提出されると、火葬、納骨という流れになる。

「ここから後は、市から委託を受けた葬祭業者にも手伝っていただきます。身寄りのない生活保護受給者を死亡地にお迎え、安置、納棺、火葬、骨上げ、骨壺に入れるまでです」(大阪市関係者)

医療センターのすぐ横で、大胆にも酒盛りをする入院患者たち。あいりん地区に関して言えば、酒を呑みすぎて突然死する人が多いという

 市から委託を受けた葬祭業者は「葬祭扶助」費を受け取る。その額は、「大阪市の場合だと20万1000円以内」(葬祭業者)だという。

「口さがない人は、葬祭業者はこの葬祭扶助費20万1000円のなかで儲けを出すために、遺体保存のためのドライアイスを使っていないとか、供物の花を造花にしているだとかいいます。しかし、そういうことはできないものです。信用に関わりますから」(前出・葬祭業者)

 大阪市関係者によると、この葬祭扶助費の範囲内で葬祭業者は「霊柩車を手配し、運転し、ご安置し、火葬場にお連れするとなると、葬祭業者の利益はほとんど出ていないのではないか」と話す。

 いわゆる「葬儀」は、葬祭業者により多少の違いがあるものの、概ね、火葬場に着いてから葬祭業者の社員たちの手で行われるという。「ただ、私たちが手を合わせて終わりです。祭壇はテーブルです。何も書かれていない位牌と供物を備えています」(葬祭業者社員)

 読経は行われないという。

 そうした葬儀の実態に大阪市関係者の1人は、「せめて(亡くなった)ご本人と縁のある信仰で送ってあげたいが、現状ではこれが精一杯」と語る。僧侶や神父を呼べば、その分、費用がかさむ。交通費だけを支給するにしても、その財源を捻出するには、さまざまな手続きを経なければならない。

「大阪市では、『行旅死亡人の救護及び埋火葬』費は28年度は1485万8000円、29年度には1340万6000円を。同様に『葬祭扶助』費は28年度は8億9274万円、29年度には8億7026万9000円を計上しています。これでもまだ足りないくらいなのです。予算的には、これ以上の手厚い葬儀の実施は難しいと言わざるを得ません」(大阪市関係者)