そしてエンディングでは、提案する商品・サービスに込めた「念(おも)い」や自社の「企業理念」を伝える。

【図2】営業プレゼンの時間配分

「つかみスライドやボディがいくら魅力的でも、商品・サービスに込めた『念い』が伝わらなければ、本当にターゲットの心に響くプレゼンにはなりません。私が講師をしているプレゼン・スクールで、ある健康食品販売会社の社長はこの念いを『お金持ちになりたい!』と書きました(笑)。正直な気持ちかもしれませんが、これでは絶対に相手は納得しない。そう指摘すると、改めて創業当時の気持ちを思い出した彼は『お客様の健康を守りたい』と書き直した。これが良いプレゼンの第一歩です。誰が聞いても納得できる『念い』を根っこにもったとき、初めてプレゼンのテクニックが生きてくるのです」

 社外プレゼンには、営業プレゼンと説明会プレゼンがある。一般に商談の時間は30分~1時間だから、営業プレゼンは3~5分で終わらせるのが基本だ。残りの時間は質疑応答、商談にあてる。聞き手の疑問に的確に応えられなければ商談に入ることは難しくなるため、万全のアペンディックスを用意しておきたい。【図2】

つかみは「数字~質問」で
相手の感情を強く刺激する

 前述したストーリーの中でも、社外プレゼンの命ともいえるのが(1)の「つかみ」の部分だ。開始30秒以内には、「そうそう、それが問題なんだよ」などと共感を引き出すことが重要という。それにはどうすればいいのか。

「最も効果的なのは、『数字』と『質問』で相手を惹きつける方法です。人間には文字よりも数字に反応する習性があり、数字がもつ具体性も強いインパクトを与えます。例えば、『情報漏えいのリスク大』というよりも、『情報漏えいの賠償200億円』と言われたほうがギョッとしますよね。このように数字によってリアリティと迫力が生まれるのです」

 一方、質問には、単に話を聞くという相手の受動的な姿勢を、自分の頭で考えるという主体的な姿勢に切り替える効果がある。その結果、プレゼンを「自分事」として考えてもらいやすくなるわけだ。

【図3】「数字×質問」のつかみスライド

 具体的なやり方を、例えばタブレット上で商品カタログが見られる「デジカタ」なる商品があって、それを社外プレゼンするケースで説明しよう。【図3】が資料のイントロ部分だ。

 まず、冒頭で「5000万円」という数字だけを表示したスライドを示すとともに、「何の数字だと思いますか」と質問する。相手が「何だろう?」と思考モードに切り替わったタイミングで、次のスライドで「1年間 紙カタログのコスト」という答えを示し、相手の感情を揺さぶる。さらに、3枚目の「5000万円で20人の追加採用」というスライドでたたみかける。これを見れば、誰もが「カタログに5000万円もかけるくらいなら、営業戦力を充実させたほうが売り上げは上がる」と直感するだろう。そこに、「売り上げを上げたい」という願望が生まれるわけだ。

「このように感情を刺激することができれば、プレゼンを聞く姿勢が前のめりになってくるはずです。イントロにはさまざまなバリエーションがありますが、私はこの『数字~質問』が最強のパターンだと考えています。これまでつくった社外プレゼン資料の8割以上はこれです」