6月に刊行されたばかりの新刊『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』の著者・鈴木秀明さんと『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』の著者・西岡壱誠さんによる東大×勉強法対談<後編>です。500を超える資格試験に合格している鈴木さんと、偏差値35の落ちこぼれから東大合格を果たした西岡さん。お二人の勉強法のヒミツを探ります。(構成:狩野南)

ゲームは人生に
置き換えられる!?

鈴木 私も西岡さんと同じくゲームが好きなのですが、ゲームって楽しいだけではなく、「自分のタスク、到達度が見える」というのが大きなポイントだと思います。レベルが15から20に上がるとか、ゲームクリアしたり、ゲームオーバーになってしまったり、自分の実力や到達点がはっきり目に見えますよね。資格試験も同じで、点数や合格不合格が明確にわかる。それが「見える化」されないまま、ただ漠然と勉強しているだけだと、なかなかモチベーションがわかないのではと思います。

努力や勉強を続けられる人は、普通の人とマインドセットが違う西岡壱誠(にしおか・いっせい)
東京大学2年生。1996年生まれ。東大輩出者ゼロの無名校でゲームにハマり、落ちこぼれ、学年ビリに。偏差値35の絶望的状況から一念発起して東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で、箸にも棒にもかからず不合格。崖っぷちの状況で「ゲーム式暗記術」を開発し、みるみるうちに偏差値が向上。東大模試第4位になり、奇跡の東大合格をはたす。著書に『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』がある。

西岡 「見える化」されると、自分のスタート地点、今いる場所も明確になりますよね。この先に進みたいけれどうまくいかないとなったら、じゃあなぜダメなのか、どうすればうまくいくのかを考えるじゃないですか。ゲームに置き換えると、すごくわかりやすいなと思って。それで、本のあとがきにも「暗記も、勉強も、試験も、そして人生すら、ゲームみたいなもの」と、はっきり書いてしまったんですけど(笑)。

鈴木 「おもしろきこともなき世をおもしろく」という言葉がありますが、結局、人生ってそういうことなのかなと思いますね。勉強だけでなく、仕事や家事なども、言ってみれば本当に単調な作業。そこに、いかに面白みを見つけてやっていけるか、ということなんじゃないですかね。

西岡 単調にしないためにも、メリットをつくるといいと思います。私は、目標をクリアしたら、自分で設定した「ご褒美」をつけるという方法をおすすめしています。「ご褒美のために勉強するの!?」と思われるかもしれませんが、そういう工夫もモチベーションにつながりますよね。

鈴木 そう。好きなことだけ、やりたいことだけやっていける人なんていないですからね。やりたくないこと、やらなくてはいけないことに、面白さ、楽しさを自分で見出していくと、人生も変わってくるのでないでしょうか。

自分の好きなものと絡めて
勉強する

鈴木 これまで「ゲームは多くの人が楽しいと思うもの」という前提で話してきていますが(笑)、もちろんそうではない人もいますよね。その場合は、何でもいいので、自分の好きなこと、面白いと思うことに絡めてみるといいと思います。

西岡 自分の好きなことをやっているとき、私だったらやっぱりゲームになってしまうのですが(笑)、「このゲームに出てきた単語に似ている英単語、あったよな。意味を求められたら答えられるかな?」というふうに、勉強と結びつけていくといいかもしれないですね。漫画が好きな人だったら、戦国武将の名前を覚えるために歴史漫画を読んでみるとか。

鈴木 西岡さんの『「ゲーム式」暗記術』の中にも似たような話がありましたよね。

西岡 アイドル好きな友だちが、日本史の偉人の名前を無理やりアイドルの名前と結びつけて覚えたというエピソードですね(笑)。多少強引でも、好きなものと結びつけた時点で苦ではなくなる。ちょっと回り道になるかもしれないけれど、“急がば回れ”で、結果的にちゃんと覚えられるならそういうやり方もありだと思います。

鈴木 好きなものが思いつかないっていう人もいるかもしれませんが、見極めていけば、絶対何か絡められるものがあるはず。

西岡 好きなものがない人なんていないですからね。

鈴木 そういう意味では、日頃から好奇心を持って、好きなもの、興味のあるものの範囲を広くしておくのはいいと思いますね。

西岡 好奇心ということでいうと、「何でこうなっているんだろう?」という素朴な疑問を日常のなかに見つけていくことが、学問の扉になると思います。たとえば道を歩いていても「なんであそこにあんな看板があるんだろう?」「知らない単語が書いてあるけれど、どういう意味なんだろう?」とか、学べることはたくさんあるじゃないですか。小さいことでも疑問に思い、それを自分なりに消化して次につなげる作業を続けていくと、いつのまにかいろいろな知識が身につくんじゃないでしょうか。

鈴木 そういう積み重ねが、ビジネスや発明にもつながっていくんでしょうね。