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元米国防次官補 ローレンス・コーブ
「オバマは外交音痴ではない」

週刊ダイヤモンド編集部
【第18回】 2008年8月5日
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外交経験を売りにするマケイン氏に対して、オバマ氏の外交手腕を危惧する声は根強い。だが、、元国防次官補のコーブ氏は、イラクとアフガンで判断ミスを繰り返すマケイン氏こそ「外交のプロ」として看板倒れだと指摘する。(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)

元米国防次官補 ローレンス・コーブ(Lawrence J. Korb)
元米国防次官補 ローレンス・コーブ(Lawrence J. Korb)

 イラク政策が大統領選の大きな争点になるなか、オバマ候補(民主党)は一貫して「就任後、16ヵ月以内の米軍戦闘部隊の撤退」を主張している。撤退期限を設けることでイラクの統一に必要な人々の政治的和解を促し、同時に米国はイラクの周辺国と協力して建設的な支援を行なうことができる。何より重要なのは、イラク国民がそれを望んでいることだ。

 イラク人の過半数は「米軍は治安維持よりも暴力悪化に貢献している」と考えている。そしてイラク議会は「米国が撤退期限を設けなければ今年末に切れる2国間協定を締結すべきでない」との声明を出し、マリキ首相は「2010年までに米軍戦闘部隊が撤退することを期待する」と述べた。

 マケイン候補(共和党)は、イラク増派の成功を過大評価している。たしかにイラクが安全になったのは増派が一因だが、それよりむしろ米軍とスンニ派武装勢力が協力してアルカイダ掃討作戦を行ない、暴力が減ったことが大きい。この作戦が始まったのは2006年9月で、増派が完了した2007年7月よりずっと前のことだ。

 オバマ氏は「テロとの戦いの主戦場はアフガニスタンだ」とし、就任後、2個、ないし3個旅団を増派する方針を示した。アフガニスタンとパキスタンの国境付近でアルカイダの中枢が組織を建て直しており、危険が差し迫っている。「9・11」(同時多発テロ)のようなテロ攻撃を再び計画しているかもしれないのだ。

 米軍は戦闘部隊をイラクから撤退させなければ、アフガニスタンへの本格的な増派は難しい。戦闘部隊は通常、1年間派遣されると帰国して2年間過ごすが、現在イラク駐留部隊は1年しか本国で過ごせない。このままアフガニスタン増派をすれば、本国で1年も過ごせない兵士が多数出るだろう。それは部隊の士気やリクルート(新兵募集)に悪影響を与え、精神障害などの増加にもつながる。すでに約30万人の米兵士がPTSD(心的外傷後ストレス障害)をかかえているのだ。

 マケイン氏は「外交・安全保障では自分の方がすぐれている」と言うが、はたしてそうか。彼はつい最近まで「アフガニスタンはうまくいっている。まったく問題ない」と発言していた。ところが突然、「アフガニスタンへ3個旅団を派遣する」と言い出したが、イラクから撤退させずに部隊をどこからもってくるのか。

 マケイン氏は立派な軍歴をもち、戦争捕虜から生還した偉大なヒーローだが、判断力には問題がある。イラク開戦に賛成し、最初の1年は「イラク政策はうまくいっている」として増派にもふれなかった。米国は兵力16万人で開戦したが、当時の陸軍大将は「最低数10万人は必要だ」と主張。議会で証言までしたが、同席したマケイン氏はそれを支持しなかった。

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